2021年4月9日、オール下北沢ロケで撮影された映画『街の上で』がついに公開初日を迎えました。 ヒューマントラストシネマ渋谷で行われた初日舞台挨拶には、主演の若葉竜也さんをはじめ、穂志もえかさん、古川琴音さん、萩原みのりさん、中田青渚さん、そして今泉力哉監督の6人が登壇。作品に関するエピソードや見どころなどを語りました。
※上映後の舞台挨拶のため、作品の内容に触れている部分があります。ネタバレを避けたい方はぜひ作品をご覧いただいてから、以下の舞台挨拶記事をご覧いただくことをオススメします。
今泉監督は「1年間公開が延びた中、満席のお客さんの前でお披露目することができ、とても感慨深いです」と挨拶、さらに「もう一つ感慨深いのは、この映画館ができたのは2004年でその時にここでバイトをしていて、その後3年間バイトをしていた映画館でお披露目できることはとても感慨深いです」と監督にとって縁のある場所での舞台挨拶であることを披露。
続いて、当初の予定から1年延期の上で公開されたことについて、若葉さんは「1年延期したことで女優の皆さんが活躍され、この映画を知る機会がさらに増えることになり1年延期してよかったなと。図らずも、僕も朝ドラに出演することになりまして」と語り、今泉監督が「朝ドラに出たことで、劇中のネタがひとつつぶれた。なぜ、朝ドラを辞退しなかったのか」と応じると、「辞退しないよ、朝ドラは!(笑)」と勢いよく若葉さんが被せ、会場は爆笑の渦に。作品中の朝ドラについてやりとりがあったあのシーンが、公開の1年延期によって予想外の展開を生むことになりました。
続いて、穂志さんは「『街の上で』は、新手のヨガみたいな、、、」と独特な表現で語りはじめると、「コロナ禍でストレスがいっぱい溜まり、ぎゅーっと視野が狭くなってしまって、(普段は)感じられるモノも感じることができなくなってしまっている。そんな中、この130分の日常を観たことでとても(心が)ほぐされ、街の匂いや色などを感じられるようになっていると思います。今この世の中に、出すことができてとてもよかった」と、その真意を語ります。
そして、古川さんは「色々な方々から、『街の上で』はいつ公開なの?とか、楽しみにしているよ、と言っていただいていたので、公開を迎えられ嬉しい気持ちと、お待たせしましたという気持ちがあります」と話し、「私は1年前に完成した作品を観ましたが、その頃と今観ているお客さんたちは違う景色、違う世界を重ねながら観ていらっしゃるんだろうなと思っていて、改めて今日来ていただいて嬉しいです」とこの1年間の環境変化を感慨深く語ります。
次に、萩原さんは「どの現場に行っても、試写を観た関係者の皆さんから『街の上で』は異常なくらい感想が届きみんなめちゃめちゃ褒めてくれる作品で、この作品が公開していなかったことが不思議なくらい感想をもらっていました。それが、ここから広まっていくんだなと思うと、とても楽しみです」と、公開前にもかかわらず多くの方が感想を寄せてくれたことと、公開後が楽しみであることをストレートに表現。
さらに、中田さんは「私も1年前に作品を観て、舞台挨拶もあるので改めて最近観ましたが、日常が恋しくなると言うかこの映画を観てほっこりすると同時に、あの日々が早く戻ってきて欲しいと思う映画でした。やっと公開することができてよかった事と供に、観てくださった皆さんにも日常がはやく戻って欲しいと思います」と、公開を喜びつつも今の難しい社会情勢を憂うコメント。
最後に今泉監督から、初主演となった若葉さんについて「若葉さんにとっては主演とかたぶん関係なくて、現場で真ん中にいつものように気負うこともなくいてくれたので、メチャクチャ助かりました。若葉さんは自分から行動すると言うよりは、(ここにいる)女性陣や街の人たちといった訳の分からない人たちに巻き込まれてゆく映画でして、そんな若い俳優さんが多い中で若葉さんがいたからやりやすかった、そんな作品の空気を作ってくれたと思います」と、若葉さんだからこそ作り上げることができた現場の空気感を振り返ります。すると若葉さんは「僕はただ佇んでいただけなんですよね」と応じ、「まだ映画に出演したことのない方や、経験の浅い役者さんがたくさん出ていて、定石的なアプローチとは全然違うことをやってくれる。それがすごく新鮮で刺激的にリアクションを取ることができ、そんなことの重なりがこの映画を作っていった感覚がありますね」と、映画制作の現場を感じることができるリアルなエピソードを語ってくれました。
続いて、印象に残っている好きなシーンについて、若葉さんは「警察官に絡まれる所」と笑いながら即答。「十何年ぶりに本番中に吹き出しそうになって、ルノアール兄弟の左近さんが演じていますが、ヨーイスタートがかかってから台詞を言うとかも理解していなくて、突然台詞をしゃべり出したり。でも、役者はそういう姿であるべきだと、プロに近づけば近づくほど嘘くさくなっていく職業なので、いかに何者でもない自分でいられるかをすごく感じ、背筋が伸びる思いでした」と、これまた現場でのエピソードを披露。
穂志さんは「観るたびに好きなシーンが変わりますが、(萩原さん演じる)町子と(古川さん演じる)冬子が言い合う所で、あのシーンを観た時にお二人があまりにも(キャラクターが)違うのに魅力的なんです。ツイッターとかで私たちヒロイン4人の写真が4分割で紹介されていて、それが恋愛シミュレーションゲームみたいな感じで『誰を選ぶ?』みたいになっているのですが、これ私は選べないってなりました。そこに(中田さんが演じる)イハまで出てきて、ああもう無理だって。三者三様の輝きに私は胸を打たれてしまって、誰派とか言えないくらい3人のことが大好きになってしまいました。その瞬間、『街の上で』に出てくる全員のことがそれぞれ愛おしく思えてきて、、、」と、この作品に関わる全てのキャラクターに対する愛を告白。
古川さんは「中田さんと(若葉さんが演じる)青の長回しのシーンが本当に大好きで」と語りはじめ、「あのシーンはのぞき見をしている感覚があって、観客とスクリーンの境目が曖昧になる感じがしていてすごくむずむずするというか、あの空気をお客さんと一緒に共有できるシーンで、そこが心を動かされ楽しいと思いました」と話すと、今泉監督が「ちょっとかんだりしてますがそのまま使ってますね。最も言及されます、ほぼ一発で撮っているのでこのシーンは他の人には撮れないものになったな」と、17分間にわたる長回しのシーンがこの作品において重要であることを知ることになります。
さらに萩原さんは「私もそのシーンが好きですが、好きと同時に一生叶わない悔しさがすごかった、絶対にあんなことはやれない、負けた、悔しい、と思いました」と共演者であるからこその複雑な思いを表に出すと、当事者である中田さんは「私ももう一回やれと言われても、多分できない。あの時期の私だったから、相手が若葉さんだったからできたシーンだな」と振り返ります。
また、中田さんは好きなシーンについて「朝、マスターと雪さんと私と青が集合して、自転車が来て、その自転車を奪ってからの坂道が登れないというシーンが好きで、私から見ると雪さんはずっと怖いというか、かわいらしい一面が見えなかったですが、(坂を自転車で)登れないことで雪のかわいらしさが見えてすごく好きです」と、まさに観客の誰もが感じていたことを語ります。すると、今泉監督が「脚本にあったわけじゃなく、実際に坂を登れない様が現場で起きたので。普通だったら追いつかれてしまうとかリアリティを取るかもしれないですが、登れない方が面白いよねということでそのまま採用しました」と、演技を超えたリアルが生み出した奇跡があのシーンにあったことを教えてくれました。
最後の挨拶として、今泉監督から「(映画の)中の世界と今見ている世界が変わってきていますが、(いつか)戻ってくると信じている部分もあるしライブハウスでライブを観たりそんなことも戻ってきているので、気をつけながら映画だけじゃなくて色々な文化に触れてもらえたらいいなと思います。ライブとか人と飲んだりすることが、すごく尊いモノになっちゃっていることは実はこの映画が求めていることではなくて勝手に高尚な映画になっちゃってますが、娯楽ですし気楽に観てもらえるつもりで作っています。(以前の日常が)早く戻ってきて欲しいと思いますし、この映画に限らず色々な映画を観て欲しい。自分は不安視していたんです、この映画を観れば気に入ってもらって次の仕事につながるはずとそのくらい自信があったから、1年延びることによって若い役者さんの皆さんを観てもらえないことが嫌だなと思っていましたが、それどころかこの1年間の間にそれぞれが活躍してこの映画にお客さんを連れてきてくれることを喜ばしく思っています。また、自分もご一緒したいですし、面白い映画を届けることができればと思っています。SNSで感想を書いてくれるのも嬉しいですが、直接口から口に伝わる感想はとても拡がると思っているので、まわりの方に直接感想を伝えてください」と、こんな時期であることとこの作品の本質的な価値を、ヒューマントラストシネマ渋谷で作品を鑑賞した皆さんに伝えます。
そして『街の上で』で主演を務めた若葉さんからは、「コロナが世界を変えてしまって、娯楽とか映画のあり方を考えざるを得ない状況になり、今まで映画は余裕がある中で楽しむものだったけど今は余裕が無い人たちだらけになってしまって、余裕を作るための娯楽に変えていかないと思っています。日常生活が嫌になったとかツラいことばかりと感じている皆さんにとって、最後に逃げ込める場所が映画館になったら嬉しいと、切実に思っています。きっとこの映画は明日だけ頑張ろうと思えるお守りみたいな映画になっているので、ぜひこの映画を観に来てください、よろしくお願いします」と、この映画『街の上で』がこのタイミングでの公開となったその運命と価値を力強く語り、初日舞台挨拶は終了しました。
1年越しで満を持して公開となった映画『街の上で』。公開2日目となる4月10日は今泉力哉監督が横浜シネマ・ジャック&ベティ(神奈川)・センチュリーシネマ (愛知)・テアトル梅田(大阪)、そして出町座(京都)と関東から東海そして関西を巡る舞台挨拶ツアーを実施。それ以外にも、全国の劇場で上映されていますので、ぜひ劇場に足をお運びください。
そして、もうすこし気軽に下北沢に来ることができる状況になりましたら、映画『街の上で』に登場する様々なお店や場所を巡っていただきたいです。下北沢を勝手に代表して、しもブロはそんな皆様を歓迎します!
『街の上で』
出演:若葉⻯也、穂志もえか、古川琴⾳、萩原みのり、中⽥⻘渚、村上由規乃、遠藤雄⽃、上のし
おり、カレン、柴崎佳佑、マヒトゥ・ザ・ピーポー(GEZAN)、左近洋⼀郎(ルノアール兄弟)、
⼩⽵原晋、廣瀬祐樹、芹澤興⼈、春原愛良、未⽻、前原瑞樹、タカハシシンノスケ、倉悠貴、岡⽥
和也、中尾有伽、五頭岳夫、渡辺紘⽂/成⽥凌(友情出演)
監督:今泉力哉
脚本:今泉力哉 大橋裕之
撮影:岩永洋
録音:根本飛鳥
美術:中村哲太郎
⾐裳:⼩宮⼭芽以
ヘアメイク:寺沢ルミ
助監督:滝野弘仁 平波亘
スチール:⽊村和平 川⾯健吾
音楽:入江陽
主題歌:ラッキーオールドサン「街の人」(NEW FOLK / Mastard Records)
製作:遠藤⽇登思 K.K.リバース 坂本⿇⾐
プロデューサー:髭野純 諸田創
ラインプロデューサー:鈴木徳至
制作プロダクション:コギトワークス
特別協⼒:下北沢映画祭実⾏委員会/下北沢商店連合会
製作幹事:アミューズ
配給:「街の上で」フィルムパートナーズ
配給協⼒:SPOTTED PRODUCTIONS
2019/日本/カラー/130分/ヨーロピアン・ビスタ/モノラル ©『街の上で』フィルムパートナーズ
■公式サイト https://machinouede.com/
■公式Twitter https://twitter.com/machinouede
■公式Instagram https://www.instagram.com/machinouede/