「待ち合わせの時間までまだあるな。本屋で立ち読みでもすっか。」

あるいは、

「ん? 面白そうな新刊。ちょっと本屋で中身をのぞこぅっと。」

時々するよね、そういうこと。

そんな日常のひとコマを経験できない街がある。新刊書を扱う書店が地元にない自治体数が、全国で332市町村もあるのだ。それは自治体数の5分の1にも上る(書店情報を集計している出版社アルメディアの調査による) 。全国の書店数は年々減り続けていて、最近では年約300店舗が減った。計算上では一日に1店舗の書店が消えていることになる。

そっか、そうだよなぁ。コンビニで雑誌は買えるし、ネットで本を買う人もいるもんな。でもね、どうだろう。本屋さんの少ない街は、人々が活字に触れる機会も少なくなって、今後ますます活字離れが進んでしまう。それは文化の衰退だ! いやいや、そんな大袈裟な話じゃなくても、本との出会いには何ものにも代えがたい魅力があるんだもの。それを知ることができないなんて勿体ない。本の中には、知識や想像力や気付きや、その他自分を深めてくれるものがいっぱい詰まっている。時には人生を変えてしまうかもしれないし。だから、本屋さんには無くならないでほしいなぁ。

だが、そんなきれいごとばかりも言っていられない。書店には運営事情というものもあるのだ。小さい書店にとって、その問題は切実である。書籍の販売だけで高い家賃を払って利益を出すのは、とても大変なことだ。一日に1店舗の割合で消えていくのも、また然りかもしれない。

さて、そんな厳しい書店業界にあって、下北沢では個性的な独立系書店が頑張っている。

例えば「B&B北沢2-12-4。「B&B」というのは、「Book」&「Beer」の略で、本を読みながらビールが飲めるというコンセプトの書店だ。棚に並んでいる本は、著者別やジャンル別に分けられているのではなく、意味や文脈が関連したもの同士を同じ棚に並べている。

お店があるのは、南口商店街の脇道を入ったビルの2階。決して分かりやすい場所ではない。本の販売だけでやっていくのは難しいうえ、場所も分かりづらい。この難点をカバーするために、「B&B」ではいくつかの別な要素を掛け合わせている。
まず、ビールやコーヒーなどドリンク類の提供を行っていること。ビールは、レジのカウンターに備え付けてあるサーバーから注がれる樽生。本格的だよ。
そして、もうひとつはイベントを毎日開催していることだ。ひゅ~。毎日だって!イベントの企画や実際の運営には手間がかかるけど、本はどこの書店でも買えても毎日のイベントはその日「B&B」に来ないと体験できない。イベントに来た人が本を買ってくれるかもしれないし、外すことのできないコンテンツだ。

こうしたイベントの収益と、ドリンクの販売、その他店内にあるテーブルや本棚などの家具・雑貨の販売と本業である書籍の販売と合わせて、収益を出すようにしている。

「B&B」の他にも、個性的な書店がいくつかある。

 

クラリスブック
北沢3-26-2
一番街商店街にある古書店。以前は神保町の書店で働いていたという店主のセンスがひかる品(本?)揃え。写真集やアート系の本の他に、思想書など哲学系も充実。

 

ジュライブックス/七月書房
北沢2-39-14
女性店主の、内装の可愛らしい店。
絵本が充実している。文具やこれまた可愛い雑貨も販売。


ダーウィンルーム
代沢5-31-8
「教養の再生」を理念に掲げる書店。
書籍のほかに、動物のはく製、昆虫等の標本、化石、鉱石なども売っている。
理科好きでなくても楽しめそう。
店内にはカフェスペースもあり、コーヒーを飲みながらゆっくりと本を眺めることができる。


気流舎
代沢5-29-17
木目の美しい外観が個性的な古書カフェバー。店内は、木のぬくもりが溢れた温かい空間。
読書会やライブなど、各種イベントも開催されている。
店番をメンバーが持ち回りで担当している。


ここに挙げたのは数例。まだまだある。

こんなふうに見ていると、下北沢では小さいながらも面白いことをやっているお店が多い、って思うよね。だから、人気が高まる。どんどん人が集まる。でも、そうやって街に人気が出て知名度が高まると、それに付随して地価の上昇や家賃の高騰が起こる。家賃が上がってくると、個人経営の小さなお店は運営が難しくなって、やがては消えていくところも出てくるのだ。

以前は、小さい店が潰れたら、また次に小さな店が入るという循環だったのが、最近は、小さい店が潰れた後に、大手チェーン店が入ってくることが増えているようだ。これでは下北沢が、どこにでもあるような街になってしまいそう。この街に人気が出たことで、逆に下北沢らしさがなくなってしまうのは、何とも寂しい。ここに挙げた書店が、イベントや、書籍以外の販売を行っているのは、あくまでもお店を存続させるため。彼らの気持ちは同じなのだ。それは、

『面白い本を読んでもらいたい』

ということ。イベントや販売は、本を売るため、お客さんに本との出会いの場を提供するための、手段のひとつに過ぎない。

下北の本屋さん、かっこいい!

そして、本の世界と時間を共有しているときのあなたは、魅力的だ。