映画『謝肉祭まで』 映画『謝肉祭まで』

[レビュー]映画『謝肉祭まで』、三人のうち一人ではなく二人が選ばれる意味

2023年4月14日(金)下北沢トリウッドにて映画『謝肉祭まで』が公開されました。

映画『謝肉祭まで』
映画『謝肉祭まで』

<あらすじ>
400年に一度の謝肉祭がやってくる。謝肉祭の7日前、全国の神の中から三人の神、ワラウ神・ミル神・オドル神が選ばれ、合宿所に集められた。三人のうち二人の神は、祭り本番の舞台で死ななくてはならない。それはしきたりであり、大きな名誉である。
誰が選ばれ、誰が残るのか。そしてどうやって決めるのか。集められた三人の神は話し合いを始めるが、話は的を射ない。3日目、大神様が三人の元に現れる。祭りへのプレッシャーをかける大神。三人の心は掻き乱されていく。

謝肉祭のために選ばれた三人の神。7日の間に、三人の中からさらに二人を選び祭りの本番に舞台で死ななければならない。ところで神は死ぬのだろうか? 神という存在にほとんど興味が無い自分にとって、この映画『謝肉祭まで』の設定はサッパリ分からなかったが、作品を実際に観て感じたことは三人から一人ではなく二人を選ぶという事に、深い意味があると知ることになる。

選ばれた二人は死ぬ、それは神として大きな名誉であるのだが二人は死んでしまう。一方で選ばれなかった一人は、神として名誉を得ることができないが死を免れる結果となる。もし、この設定が一人が大きな名誉と共に死を与えられるとしたら、話は全く違ってくるだろうし、その事実に対する葛藤もまた違った展開になるだろう。そう、三人のうち二人が選ばれ、そして死ぬという設定が、この作品の深さ、広さを永遠に感じさせてくれるのだ。

映画『謝肉祭まで』より
映画『謝肉祭まで』より

そして、三人の神の存在について。ビジュアルや設定を見る限り全くかみ合わなさそうなイメージにもかかわらず、劇中ではそれぞれの存在が、残り二人の存在と関係性によってよりハッキリと映し出される。神が食べ物を食べるのかはさておき、多くのシーンを通して食べることや飲むことを描いているのがとにかく印象深い。

映画『謝肉祭まで』より
映画『謝肉祭まで』より

43分間の本編を見ながらどんな結末が訪れるのか、最後の最後まで思い浮かばなかった。唯一、それっぽいイメージが見えつつあったが、実際の作品の結末によってそれはかき消されることになる。祭りの後、その言葉がこれほど似合う作品を私は観たことがない。三人のうち一人ではなく二人が選ばれる意味、作品を見終わった今でも私はそのことを考え続けている。


予告映像を見る限りとてもライトな雰囲気で、演出としてもポップな雰囲気をまとっていますが、実際はかなりヘビーに考えさせられる作品でした。現時点では明確に答えられないけど、数字の持つ意味についてこんなに向き合うことになるとは思いもしませんでした。あと、肉には感謝しないとなぁ、肉には感謝ですよ!

いやー、それにしても舞台となった佐渡の景色は本当に素晴らしかった。儀式が行われる舞台となった、北沢浮遊選鉱場の荘厳な雰囲気たるや、作品中でも言葉では表すことができない何かを放っていました。生きている間に一度観に行きたい。

映画『謝肉祭まで』より
映画『謝肉祭まで』より

そして、神を演じた「大山真絵子」「円井わん」「豊満亮」三名の役者の皆さん。もはや、何も言うことはありません、見事にそれぞれの神を演じていました。一人になった瞬間の表情や動き、本当にたまりませんでした。

映画『謝肉祭まで』は、4月21日(金)まで下北沢トリウッドにて上映(18日は休映)。連日、イリエナナコ監督やキャスト、そしてゲストを迎えてのトークイベントも開催、詳細はトリウッド公式サイトをご覧ください。

また、4月15日(土)16日(日)はBONUS TRACKにて『謝肉フェス』を開催。謝肉フェス公式フード「神のお恵み 謝肉パフェ」「神の忖度スープ」をはじめとして、作品の舞台となった佐渡の食やお酒、そしてグッズを堪能することができるので、ぜひお立ち寄りください。詳細はこちらの記事をご覧ください。

謝肉フェス公式フード
謝肉フェス公式フード

映画『謝肉祭まで』

期間: 2023年4月14日(金)~4月21日(金)※平日火曜定休
会場: 下北沢トリウッド(代沢5-32-5シェルボ下北沢 20B)
料金: 1,500円
※「謝肉フェス」参加者は1,200円、以下のいずれかを入場時にご提示下さい。
1) 4/14の<ファンクの宴>のライブの電子チケット画面
2) BONUS TRACKのギャラリーに展示する『謝肉祭まで』オリジナル顔はめパネルで撮影した写真
タイムテーブル:
4/14(金)~16(日) 17:30
4/17(月)~21(金) 19:00
トリウッド公式情報
出演:大山真絵子/円井わん/豊満亮 田中一平 六平直政
監督・脚本:イリエナナコ
プロデューサー:大山真絵子 共同プロデューサー:藤井宏二
撮影:JUNPEI SUZUKI 照明: 高橋亮 録音:井口慶 助監督:鳥井雄人
美術:熊澤一平 衣裳:矢田貝貴之、鈴木和人 ヘアメイク:クラークゆかり
特別協力:中島裕作 振付:小山柚香 スチール:きるけ。 デザイン:徳原賢弥
サウンドデザイン:伊藤裕規 音楽:BRADIO 制作:Libertas
©︎惑星ナナコス 2021 | 43 min| color | CinemaScope |Stereo
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