2025年9月19日(金)から10月5日(日)まで17日間にわたり開催されるアートフェスティバル『ムーンアートナイト下北沢2025』。土日祝のみ体験できる「イマーシブシアター『猫町』」が、あまりにイマーシブ(没入感のある)で且つ感動的だったのでご紹介いたします。

スタート地点は下北沢駅前、受付を済ませると事前準備のガイドが手渡される。自分のスマホとイヤホンを用意し、アプリ「ON THE TRIP」を起動、案内に書かれる手順に従い操作する。アプリから流れる音声に従いストーリーが進むことを事前に体験でき、わくわく感が増します。
体験がスタートすると音声、いやこの作品における詩人の言葉に従い自らストーリーに飛び込みます。音声ではなく言葉と書きたくなったのは、まさにそう表現するのが相応しい作品の最重要ポイントでもあるから。この詩人の言葉の素晴らしさが、作品への没入感を確実に高めてくれます。
そして、もう一つのポイントは「猫町の女」たちの存在。自分が飛び込んだストーリーに彼女たちが登場することで、自分は今下北沢の街を歩いているのにどこか全く知らない世界にいることを確信させてくれます。ああ、今文章を書いていても震える、そんな感覚が蘇ってきます。
ストーリーが進みとある場所にたどり着きますが、そこでの体験は完全なる非日常空間。さらには、自分たちがいる場所は客席ではなくステージ、いや敢えて表現するのならストーリーの中に完全に入り込んでいることに気がつきます。そこで目にした美しすぎる光景、明らかに自分が知らない世界での出来事を体験してしまいました。
と、文字だけでは伝わらないモノも多いと思いますので、メディア向けの公開の際に撮影した写真もご覧ください。











最初は映像を収めようと思いましたが、あえて写真で伝えるべきだと、そして解説も不要だと。ぜひ、この写真からその世界、「猫町」を感じてください。
ストーリーを聞きながら下北沢の街を歩き、たどり着いた場所で目撃する異世界。確かに萩原朔太郎の「猫町」を彷彿とさせてくれる体験。告知記事にも書きましたが、萩原朔太郎の「猫町」は非常に難解な作品です。いわゆる小説の場合、ストーリーを読めばその光景はなんとなくイメージできますが、「猫町」はそれがかなり難しい。イマーシブシアター「猫町」は朔太郎がイメージした世界とは全く違うものかもしれないけど、この作品を創り上げたdaisydozeのみなさん、そして青猫と猫町の女たちによる様々な感情が入り乱れたダンス=表現により、朔太郎が何を描こうとしていたのか、自分の中で理解できた気がします。
そしてもう一点、イマーシブシアター「猫町」は下北沢という街に徹底的に寄り添った作品であり、『ムーンアートナイト下北沢2025』にしか成立しなかったと確信できます。メイン展示のNelly Ben Hayoun-Stépanian「Schrödinger’s Cats」、この作品がそこに存在しているからこそイマーシブシアター「猫町」の世界感はより深く印象的になっていることもポイントです。

昨年くらいからよく耳にするようになった“イマーシブ”というキーワード、没入感が感じられる演出が施された作品に対して使われますが、正直、これはイマーシブだと感じられるモノは未だ体験できていませんでした。が、「イマーシブシアター『猫町』」は完全にイマーシブな体験ができる作品だと断言できます。
いやー、アートイベントも4年目になるととんでもない世界感を持つと改めて感じました。メイン展示と共に『ムーンアートナイト下北沢2025』を代表する作品であり、イベントが終わってしまえば二度と体験することができない貴重なものです。45分間3500円はどう考えても安いです。ぜひ、『ムーンアートナイト下北沢2025』で真のイマーシブを体験してみませんか? そして、私ももう一回、体験してきます。
P.S.
もう、この作品はメイン展示と同じく代表するアートだと言わざるを得ません。月と共に、今後の『ムーンアートナイト下北沢』には欠かせないモノとして、来年以降も新作を体験したいです。小田急さんとスタートバーンさん、そしてdaisydozeさん、よろしくお願いします!
イマーシブシアター「猫町」
公演期間: 2025 年 9 月 20 日(土)~10 月 5 日(日)の土日祝のみ開催
公演開始時間: 16:00~20:40 の間(20 分間隔で出発)
体験時間: 約45分
集合場所: 下北沢駅東口(改札外)
解散場所: 世田谷代田駅周辺
持ち物:ご自身のスマートフォン、イヤホンをお持ちください。
チケット料金:
① イマーシブシアター「猫町」公演チケット:3,500 円(税込)
② イマーシブシアター「猫町」ムーンアートナイト特典付チケット:4,500 円(税込)
※②はムーンアートナイト下北沢の有料会場への入場を含む複数特典つきチケット+イマーシブシアター「猫町」のチケットが含まれます。
チケット販売: https://eplus.jp/sf/detail/4371090001-P0030001
[ストーリー]
下北沢には、猫に憑かれた不思議な町がある—
変わりゆく下北沢の街で、ロマンを失った詩人は、満月の光を頼りに散歩をする。まっすぐ伸びる線路沿いを誰かの視線を感じつつも、歩み続ける。迷子になりそうな不安に襲われたその先で、ふと辿り着いたのは、猫に憑かれた裏側の異界。
見えないものが、見えてくる—音声+ダンスのイマーシブシアター。
※この物語は、萩原朔太郎著「猫町」をオマージュしたフィクションです。
[キャスト]
青猫:いのまいこ
猫町の女たち:土屋桃子/RUNA/ryoka/Kisa Takeda/ALISA/kanoko/和気香都乃/みさと
詩人(声の出演):森準人
[スタッフ]
作・演出: 竹島唯(daisydoze)
クリエイティブプロデューサー・衣装:近藤香(daisydoze)
音声 AR・クリエイティブ制作:ON THE TRIP
サウンドエンジニアリング:小崎弘輝
ダンスディレクター・振付:いのまいこ
体験設計:高市祐貴(daisydoze)
体験設計アシスタント:久谷理紗
制作進行:吉田夢唯(ゴーチ・ブラザーズ)
衣装:Mirach Design Works
美術:原良輔(演劇空間ロッカクナット)
楽曲:糸山晃司
音響:向井浩二
照明:渡邉幸朔
グラフィックデザイン:巻淵香織フォトグラファー:本間寛
企画・プロデュース・主催:daisydoze
助成:東京舞台芸術祭 2025 Open Call Program 補助対象事業
特別協力:アーツ前橋
制作協力:ゴーチ・ブラザーズ
協賛:株式会社オーディオテクニカ
協力:スタジオユニアス(株式会社 DanceNow)
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