FURUTAMARU. Vol.3 『豚の砦 -Pig Fort-』 FURUTAMARU. Vol.3 『豚の砦 -Pig Fort-』

FURUTAMARU. Vol.3 『豚の砦 -Pig Fort-』出演者インタビュー

2021年2月7日(日)、下北沢「劇」小劇場にてFURUTAMARU. Vol.3 『豚の砦 -Pig Fort-』が上演されます。

「フルタ丸 胸に迫る あたたまる」をモットーに、ひとりぼっちの夜を救う演劇を創作している東京の劇団フルタ丸。2018年から、山田伊久磨・清水洋介・フルタジュンによる「FURUTAMARU.」シリーズを開始。機動力のある表現方法で国内ツアーと海外展開を目指しています。今回はその第三弾公演『豚の砦』を上演。誰もが知っている『三匹の子豚』をモチーフとした作品です。

メンバーにとっても久しぶりの有観客での公演。また、緊急事態宣言が発令されている最中での公演ということもあり、通常とは違う環境の下で上演されます。そんな状況のため、今回は稽古場にいるFURUTAMARU.の3名に加え「声」として出演される篠原友紀さん(劇団フルタ丸)に、リモートインタビューをさせていただきました。

<インタビュー実施日:2021年1月31日>

FURUTAMARU. Vol.3 『豚の砦 -Pig Fort-』リモートインタビュー
FURUTAMARU. Vol.3 『豚の砦 -Pig Fort-』リモートインタビュー
左からフルタジュン、清水洋介、山田伊久磨、篠原友紀

---今も皆さんマスクをされていますが、やはりコロナ以前に比べると稽古も大変でしょうか?

フルタジュン(以下、フルタ): まず、マスクは必須で、稽古でもマスク越しでしか台詞のやりとりはできていないです

---ちなみに本番はマスクは無しですよね?

フルタ: はい、外します

---稽古については感染対策とはいえ、それだけでも大変ですね。あと、稽古場についても時間的な制約があるとか

フルタ: 区の施設を使うことが多いのですが、20時前に利用区分が切れるタイミングが19時半でして、そこで稽古が終わってしまいます。以前なら22時までできたのが19時半で終わってしまうので、2時間半くらい短くなっています

---2時間半も、それはとても影響が大きいですよね

フルタ: なにげに大きいですね

山田伊久磨(以下、山田): ただ、稽古時間の総量は変わっていなかったりします。いつも、2時間くらい無駄話をしてから稽古をするスタイルだったので、今はいきなりスパーリングがはじまるみたいな感じです

---え、2時間くらい無駄話?(笑)とはいえ、今までのやり方を変えなければならないのはかなり厳しいですね。本番まであと1週間ですが、準備はいかがでしょうか?

フルタ: 実はまだ、通し稽古ができていなくて、明日初めてできそうです。そういう作り方の作品にしたとこともありますが、今回篠原さんが「声」だけ出演する関係で役者だけで稽古ができない理由になっていまして、、、ちょっとふわっとしたことしか言えないのですが。いつも3人で稽古はしていますが、この「声」という存在の出演者と一緒に稽古をしようとすると限られたタイミングしかなくて、明日やっとできる予定です

---FURUTAMARU.としては「虎の館」と「梟の服」に続き、今回の「豚の砦」で三部作とのことです。「虎」と「梟」については人と人が対峙することがテーマだったと思いますが、今回はそもそも人ではなく「豚」ですよね?

フルタ: そうなんですね、豚と豚が対峙しますね

---ちなみに豚と豚ですか、それとも豚と豚と豚なのでしょうか

フルタ: 豚と豚と豚ですね、三兄弟の話なので

---今までの2作品は、一対一で対峙しているところにさらにもう一人現れて対峙するような形でしたが、今回は三人、ではなく三匹がそれぞれ同じ立場で対峙するということでしょうか?

フルタ: 今までの作品は内なる自分との対峙という意味もあったのですが、今回は「三匹の子豚」を読んだことがある方は何が敵であるのかはハッキリしています。ただ、「三匹の子豚」の頃の三匹の関係とは変わってしまっていて、三匹の中でも軋轢はありますがそれより驚異的で大きな敵がいるというような、そんな関係性の話ですね。ふわっとしていますが

---それを聞くとあまり聞いちゃいけない気がするのが、篠原さんの存在ですね

フルタ: はい、そうなんですよ。敢えて「声」だけしか言っていなくて、たぶん観に来る方からしたら分からないですよね、「声」という役は。ただ、今回の作品の中でとても重要であることは間違いないです

---ふわっとしていますが、ヒントになりました

FURUTAMARU. Vol.3 『豚の砦 -Pig Fort-』

---続いて今回のお芝居のテーマである「豚」について。ずばり皆さんにとって「豚」とはどのような存在でしょうか?

フルタ: 「虎」「梟」と合わせて好きな動物なんですよね。動物から探したこともあって「豚」がいたと思い選んだのですが、ジブリで宮崎駿さんが自分の存在を自虐も含め「豚」で表現していることが多くて、「紅の豚」も自分を投影して書いていると言われていますよね。「豚」って、醜さと愛嬌、そして食べても良しとある意味捉えどころがない動物だなと思って。可愛いのか不気味なのかよくわからない、そういう所が好きですね

清水洋介(以下、清水): 僕も「豚」好きです、豚肉が1番好きです、食べる上で。今までに「豚」の役は今までやったことがなかったので、役作りとかどうしようとか悩みましたが、そこは自分が「豚」になったらと考えてやりました

山田: 清水さん、珍しく役作りしてますよね

清水: ホントですか?

山田: 珍しいと思った、ホントに役作りしてる

清水: そのあたりは三人でコンセンサスを整えてこうやっていきましょう、と。まあ、観てもらうしかないですよね。もう、二度とないんじゃないかなと思いますね、「豚」の役は

山田: わかんないよ、当たり役になったりして(笑)

---そんな山田さんにとって、「豚」とは?

山田: 私はよく料理をするのですが、「豚」がいちばん使える素材なんです。煮て良し、焼いて良し、どんな野菜にも合う。「虎」とか「梟」はイメージがふんわりしてますが、「豚」と言われれば100人が100人だいたい同じことを考えますよね。痩せてる「豚」って誰も想像しないじゃないですか、だからイメージは伝わりやすいのかな。「虎」とか「梟」はある意味象徴でしたけど、今回の「豚」は直接的に「豚」ですから、もしかしたらこれまでの中でもいちばん題名がダイレクトじゃないかな

篠原友紀(以下、篠原): 私は保育園の頃、群馬県に住んでいて、そのお散歩コースに豚小屋があって、みんな「豚」が大好きなんです。だから、お散歩で「豚」の所に行くと、全員で「ぶたちゃんぶたちゃん、かわいいかわいい!」って見てて、みんな大好き。ピンクでプリッとしてて顔も愛らしくて、あの頃は食べるとか考えていなかったから、かわいいだけの存在であって、そのままのイメージが今も続いているのでかわいらしい愛らしい存在です。でも、今回フルタさんに本をもらって「あ、そういう感じか!」って。「豚」の色々なイメージが込められていたので、やるのが面白いなと思っています

フルタ: 「豚」ってヤクザ映画とかで死体処理の方法とかで豚小屋に連れて行かれたりして、こう小指とかをぴって落とされてそれを豚が食べちゃったりして、、、「豚」は人間を懲らしめてやろうというわけではなく、目の前にあるものを食べたいから食べている。そんな怖さがありますよね、誰にも止められない「豚」の食欲は。ああいう、ちょっと馬鹿なところもいいなと。「豚」って兵器になる、牛とかじゃダメじゃないですか、絶対に「豚」じゃないと。俺はああいう所が怖いなと

清水: 確かに色々な題材で使われますね、「豚」は

フルタ: 多面的なんですよ、かわいいという見え方もあれば、そんな怖いというイメージもあってすごいですよ

篠原: 悪口の時にも使いますよね、そっちでも使えるけど、かわいい意味でも使える

山田: そういうのありますよね。例えばハイエナは多分好きな人はほとんどいなくて、言葉の意味でも悪いイメージなんですけど、豚野郎とか汚い言葉でも使われる一方で、かわいいイメージもあるのが「豚」の凄いところですよね

---あまり深く考えずに聞いた質問でしたが、ものすごくヒントになりました。今までの経験上、「豚」というのはメタファー的な存在なのかと思っていましたが、完全に「豚」ですね

フルタ: そう、ですね、とりあえずは「豚」ですね

---今回の公演は1日限り1ステージのみとのことですが、これは敢えてなのでしょうか?

フルタ: 本当は別の場所でやろうとしていまして、そこではもう少し長くやろうと思っていたのですが、もっといい場所を考え直したときにちょうど「劇」小劇場さんが空いていて、土曜日に仕込んで日曜日だけやろうと。今は配信もあるのでアーカイブ映像として見てもらえるようにすれば、色々な人に見ていただけるチャンスもあると考え1ステージだけという、普通ではありえない逆にお金がかかる感じになりました。

演劇を劇場で楽しむ文化に加え、この1年で演劇を映像でも楽しむ文化も発達したと思っていて、まだ気軽に劇場で皆さんが観るという環境にはなかなかならないと思うので、今回撮影する「豚の砦」という作品を色々なところに持っていきたいと考えています。まずは、お芝居を上演することと、映像として撮ることを目指して頑張っています。

---今回はライブ配信ではなく、本番を録画して配信する形ですよね

フルタ: そうなんです。本番の2日後から1週間配信となります

---1日というところに大きな意味があるのかなと思いましたが、特にそういうわけではないのでしょうか?

フルタ: いや、1発1回だけの演劇を劇場でやった経験は無くて、自分たちの主催公演として時間をかけて作った物を劇場で1ステージだけやります。演劇が本来持っているライブ性の極地のような、本当に1回だけ劇場でやるという緊張感は、今までの公演とは違う感じで出ると期待しています

---やはり、敢えて1回だけと言うことですね。確かに演劇ではあまり考えられないですよね

フルタ: 効率は良くないですけど、効率とは逆の発想でいい物ができるのではないかと考えています

---そういう意味では、とてもチャレンジングです。そして、上演日の2月7日というのが現時点では緊急事態宣言の最終日じゃないですか(インタビュー後に東京の緊急事態宣言は3月8日まで延長になりました)、緊急事態宣言が決まった時にどう思いました?

フルタ: 1月7日に確か宣言が発表され「きたかー」みたいな感じでしたね。興行をやる側としては悔しくもありますが、物語の中身ともちょっと関係しているのですが公演のタイトルに「砦」という単語が入っていて、「砦」とはなんぞやということをずっと考えていました。自分にとっての「砦」とはなにか、演劇にとっての「砦」とはなにか、劇団にとっての「砦」とはなにか、この事を考えていると逆に2月7日にぶち当たってよかった。この作品が提示できる「砦」に対する答えを、世に出すタイミングとしてはよかったのではないかと。そう、一周回って考えるようになりました、中途半端にずれるよりも緊急事態宣言の最終日にこの作品を見せる、それでいいと

---うーん、深いですね、「砦」のこととか今まで考えたこともなかったですが、この作品で私たちも「砦」に向き合うことになりそうです

---それにしても、こんなやりにくいインタビューは初めてですよ、リモートでさらに皆さんマスクしてるので

フルタ: そうですよね、感情が分からないですよね、口元が見えないと

---マスクしている方に対するインタビューの難しさを感じました。私自身リモートインタビューはこれまで何度もしているのですが、みんなマスクはしていなかったので

フルタ: 私も久しくメンバーの顔を見ていないです

---本当にずっとマスクをされているわけですね、いかにこの状況の中でお芝居を作るのが大変なのかわかりました。それでは最後に、意気込みをお願いします

フルタ: このあと、稽古場から「Clubhouse」(1月末頃から突如はやり始めた音声SNS)をやってみます。僕と清水さんと篠原さんの3人でやろうと思っています

---それ、意気込み関係ないじゃないですか(笑)。いま、ちょうど流行ってますからね、じゃあそれ聞きますね(実際に聞き、さらに参加しました)。実はアカウント作っただけなので、私の初「Clubhouse」ですよ。って、ちがいますよ、「豚の砦」への意気込みをお願いします

フルタ: 意気込みを改めて言わせていただきますと、僕らがいい物を作って面白い物をやりたいと意気込むのは当たり前なので、観に来る方の「観たい」という気持ち、なかなか難しい時期ですが劇場で観劇したいという意気込みに応えたいと思っています。劇場で観た方が演劇が面白いのは間違いないことなので、それは約束したいです。

あと、今回初めてFURUTAMARU.を劇場で上演します。こんなに長くやっていて、実は1回も劇場でやっていませんでした。カフェとか図書館とか建築事務所とか、色々な場所でやってきましたが、初めて劇場に戻ります。FURUTAMARU.で劇場公演は逆に新鮮で、ある意味お初の部分もありますので、照明や音とかバチバチに凝っているFURUTAMARU.を観て欲しいです。

---そういえば劇場ではやっていなかったですね

フルタ: 本公演はもちろん劇場公演がメインですが、FURUTAMARU.では初めてなんです

---そういう意味ではとても新鮮ですね

フルタ: いろいろな会場を探して思ったのは、劇場はやはり凄い場所だなと。劇場の観やすさって半端ないですよね、理にかなってる。劇場で思いっきりやりたいと考えています

---私にとっても今年初の観劇になるので、本当に楽しみです。いつも同じお芝居を何回か劇場で観ているので、1回しか観ることができないと考えると、配信でも観劇したいと思います。お忙しい中ありがとうございました!

FURUTAMARU. Vol.3 『豚の砦 -Pig Fort-』
FURUTAMARU. Vol.3 『豚の砦 -Pig Fort-』

FURUTAMARU. Vol.3 『豚の砦 -Pig Fort-』

原作:『三匹の子豚』
作・演出:フルタジュン
出演:山田伊久磨・清水洋介・フルタジュン/(声)篠原友紀


栄光のブヒブヒをもう一度。

Glory oink oink again.

オオカミに歴史的大勝利を収めた子豚三兄弟。
世界中で彼らの偉業を知らない者はいないだろう。

二〇二一年、かわいい子豚だった三匹達はくたびれた中年豚になっていた。

ある日、疎遠のまま暮らしていた三匹が久しぶりにレンガの家に集まることになる。
しかし、すでにレンガの家の姿はなく、朽ち果てた残壁が残るのみ。
その有様は、まるでただの中年豚となり果てた自分達の姿と重なるのだった。

どうしてこんなにもズルくて醜くて情けない中年になってしまったんだろうか。

どん底の中年豚野郎たちによる哀愁と再生の童話コメディー。


【公演日時】
2021年2月7日(日)16時開演(15時40分開場)

【会場】
下北沢「劇」小劇場
(世田谷区北沢2-6-6 tel:03-3466-0020)

【チケット】
⓵劇場観劇チケット 
▶料金:3,000円 
▶チケット予約:カルテットオンライン
https://www.quartet-online.net/ticket/buta
*税込/自由席
*発売開始:2020年12月27日(日)10時

⓶アーカイブ観劇チケット
▶料金:2,000円
▶チケット予約:イープラス
https://eplus.jp/pigfort-st/
*2月10日(水)12時よりアーカイブ配信スタート
*販売期間:2月16日(火)22時30分まで
*視聴期間:2月16日(火)23時59分まで
*期間内に何度でも視聴可能
*視聴方法:イープラス「Streaming+」
*発売開始:2021年1月8日(金)12時

【注意事項】
・本公演は政府、東京都ならびに関係機関により策定された新型コロナウイルス感染症対策ガイドラインにもとづき、感染拡大防止対策を講じて開催いたします。
・ご来場の際は、マスクの着用、手指の消毒、検温、咳エチケット等感染症対策にご協力をお願いします。
・ステージから2メートル離れた最前列、また、適度な間隔のある座席配列となります。

【お問い合わせ】
info@furutamaru.com

【STAFF】
照明:宮崎晶代
音響:水野 裕(空間企画)
写真:木村健太郎
演出助手:白戸祐太郎
映像配信:natural Paradox
主催・企画・製作:劇団フルタ丸

<FURUTAMARU.シリーズについて>
「フルタ丸 胸に迫る あたたまる」をモットーに、ひとりぼっちの夜を救う演劇を創作している東京の劇団フルタ丸。2018年から、山田伊久磨・清水洋介・フルタジュンによる「FURUTAMARU.」シリーズを開始。機動力のある表現方法で国内ツアーと海外展開を目指している。今回は、その第三弾公演『豚の砦』。