2023年4月21日よりシモキタ-エキマエ-シネマ K2にて、関西インディペンデントシーンで最注目の俳優・辻凪子と、監督・磯部鉄平が気が向いた時に制作される短編作品「凪の憂鬱」シリーズの長編映画化最新作『凪の憂鬱』が上映されています。
【あらすじ】
凪(ナギ)は大阪で契約社員として働いている。
はじめての有給休暇前日に1年間付き合ってきた彼氏に振られる。
怪談したり、ライブ行ったり、ゲートボールしたり、昔好きだった人に再会したり、大喧嘩したり。
凪のメランコリックな有給休暇は過ぎていく。
付き合って1年という期間、振る側と振られる側ではその時間の捉え方は全く違う。当然のようにその期間が続くと思っていた凪にとって、その直後状況はまさに憂鬱そのもの。しかし、凪を取り巻く人たちの思いも寄らない行動により、ただ憂鬱であるだけではいられなくなるところからこの物語ははじまる。20代にとって恋愛のプライオリティはとてもとても高いものであり、本当なら何もせず引きこもってしまうようなシチュエーションにもかかわらず凪の人の良さが幸い(災い?)し、いつしか振られたことなどどうでもよくなってしまう。
凪を演じる主演の辻凪子は、不思議な存在感を持つ役者だ。純朴でかわいらしい雰囲気と語り口なのに、なんだか面白おかしくなってしまう要素をまとっている。そして「え?」「えっ!」「えー?」「えー!」など、彼女に「え」と言わせればどのシーンのどのような感情に対しても独特な説得力が生まれる、とても魅力的な役者である。
凪以外の出演者についても、それぞれ自身と同じ名前の役柄を演じているのもなんだか不思議だ。凪と同じく役を演じているのかそれとも本人そのものなのか、なんだか分からなくなってしまう感覚も面白い。
大学時代からの友人のあみ、そしてこの作品の中で新たに出会う根矢、この2人と凪との関係性の変化に大きな見ごたえを感じる。この3人の関係は今回の物語で終わるのではなくこれからも続いて行く、そう強く感じさせてくれるのもこの作品の大きな魅力だろう。
大阪を舞台とし撮影された作品だが、その中でも十三(じゅうそう)のシーンがとても心に残っている。キャラクターの濃い街ばかりの大阪の中でも独特な個性を持つ街であり、『凪の憂鬱』の世界観をより強固なものにしている。大きな川がある街はいい、あの河川敷で夜明けまでミュージシャンと語り合ったことを思い出した。
最後に指摘しておきたいのはこの作品はコロナ禍の真っ只中に撮影されたこともあり、作品中ではマスクを着用しているシーンがほとんどであること。2023年3月13日以降はマスクの着用については個人の判断となり、5月8日からは5類感染症に位置づけられ、社会は徐々に以前の景色に戻りつつあり数年後には新型コロナ感染症は過去のことになると考えられる。その点においてコロナ禍に撮影された作品は歴史的な意味を持つことになり、『凪の憂鬱』もその作品の1つであることにも注目したい。特に作品中でそのことには触れてはいないが、やはりコロナは物語にも影響を及ぼしていたと私は感じている。
今回劇場公開された『凪の憂鬱』ですが、冒頭でも触れましたが2018年に「高校生編(14分23秒)」、2020年の「大学生編(29分22秒)」に続く3作品目であり、「高校生編」「大学生編」はそれぞれYouTubeで視聴することができます。今回の作品単体としても十分楽しめますが、この2作品を先に見ておくと『凪の憂鬱』の世界観をより堪能することができるので、ぜひご覧ください。
『凪の憂鬱 -高校生編-』
<あらすじ>
高校2年生の凪(ナギ)は大阪から網走に引っ越してきて1年経ったが全然馴染めない。 放送部の企画「網走の魅力を伝える」撮影インタビューを押し付けられて1人で行う事に。 四苦八苦しながら撮影している途中で日本一周の旗を掲げているおじさんに出会う。 おじさんと行動する事になっ
『凪の憂鬱 ‒大学生編-』
<あらすじ>
大阪の大学を卒業した凪は就職が決まりカフェのバイトを辞めることになった。親友のあみに背中を押され、バイト先の詩音に想いを伝えようとする…。
1日1話、数分で展開される主人公・凪のメランコリックでモラトリアムな春の1週間。
そして、本編を見たらぜひパンフレットの購入をお勧めします。『凪の憂鬱』という作品の魅力がぎっしりと詰まっており、この作品をより愛することができるでしょう。作品に登場したロケ地紹介も魅力的ですが、凪×あみ×根矢の3人によるインタビューがとても素晴らしいです。東京編をぜひ作ってほしい! ええ、それはもう下北沢を舞台にしてくださいーー。
映画『凪の憂鬱』は、シモキタ-エキマエ-シネマ K2にてロングラン上映中。6月3日からは大阪・シアターセブン、6月9日からは京都シネマ、6月17日からは兵庫・元町映画館、6月23日からは群馬・シネマテークたかさきと続々と公開されます。ぜひ、あなたも凪の世界観に浸ってください。というか私も、もう一度見に行きたいです。
映画『凪の憂鬱』
出演: 辻凪子
根矢涼香、佐々木詩音、佐藤あみ
川久保晴、薬師寺初音、屋敷紘子、川本三吉 野村洋希、海道力也、浄弘卓磨、坪内花菜上野伸弥、松本真依、ひと:みちゃん、ハシモトタクマ 辰寿広美、仁科貴
監督・脚本・編集: 磯部鉄平
プロデューサー: 谷口慈彦
共同プロデューサー: 和田裕之
脚本: 谷口慈彦、永井和男
撮影・照明: 小林健太
録音・整音: 杉本崇志
助監督・美術: 高木啓太郎
ヘアメイク: 夏海
音楽: kafuka(江島和臣)
劇中曲: 根矢涼香「rail on the road」「MariA」
エンディング曲: 小林未奈「メロディを思い出して」
HP・ポスターデザイン: 河合良美
ロケ地協力: 塚口サンサン劇場、ワイルドパンチ、塚本エレバティ、小川マンション、ABCアネックス、 Pollux Theater、宝 湯、カンバヤシサイクル、生野区巽東第3光栄愛護会
配給: モクカ
製作: belly roll film/Japan Wing株式会社
2022年/DCP/カラー/ステレオ/98分
© belly roll film
公式Web: http://bellyrollfilm.com/nagi/
公式Twitter: https://twitter.com/melancholynagi
公式Instagram: https://www.instagram.com/naginoyuutsu/
公式YouTube: https://www.youtube.com/@user-qh3cx8me5l
K2 作品ページ: https://k2-cinema.com/event/title/207