2015年5月27日水曜日、下北沢小劇場B1にて劇団フルタ丸 第24回公演 『僕は父のプロポーズの言葉を知らない』が初日を迎えた。劇団フルタ丸主宰のフルタジュン氏へのインタビューや稽古風景から、今回の公演はこれまでとは明らかに違うと感じていた。うまく言葉にできないが、公演に対する意気込み、いや覚悟が違うと表現すべきであろう。

「何かとんでもないことが起きるはずだ、今回の劇団フルタ丸の公演で」

期待に胸を膨らませ、私は下北沢小劇場B1へ向かった。

北沢タウンホールの地下1階、そんなロケーションに下北沢小劇場B1はある

エスカレーターで北沢タウンホールの地下1階に降りる、時間は18:55、開場まではあと5分程だったが既に受付を済ませたお客さんがたくさんいた。自分も受付を済ませ列に並ぶ、今回は全体を俯瞰できる場所からお芝居を観たい。劇場に入り左側の客席通路沿い、ステージが見渡せる位置に座る。開演まで30分ある、受付横で販売していた「僕は父のプロポーズの言葉を知らない」ブックにじっくり目を通す。劇団フルタ丸の6人が表紙を飾る、この表紙も既にお芝居の一部であることを、まだこの時点では気づいていなかった。

「僕は父のプロポーズの言葉を知らない」ブックの4-5ページに今回のお芝居の「STORY」が書かれている。それに目を通し、今回のお芝居の全体像をイメージする。最初はSTORYに書かれている文章に集中していたが、そこに添えられている写真が物語を知る上で最高の手がかりとなった。フルタ丸のメンバー6人、よく知っているはずの6人なのに見たこともないような表情ばかりだ。それもそのはず、そこに写っているのはいつも見ているフルタ丸の6人ではなく、今はじめて見る『ぼくは父のプロポーズの言葉を知らない』という物語を創り出す人物として写っているからだ。

「僕は父のプロポーズの言葉を知らない」ブック 800円

続けて通常のパンフレットに目を通す。フルタさんの「あいさつにかえて」を読み、自分がフルタさんへのインタビューで伺ったことを再確認することができた。そんなことをしていると、開場からの30分はすぐに過ぎてしまう。さあ、はじまる、劇団フルタ丸24回目の公演だ。

公演期間中なので、お芝居の内容については書かない。劇団フルタ丸のお芝居はフルタさんが提示した事前情報以外は、全てその場で感じることが最も楽しいのだ。今回も物語には触れずにレビューしたい。

「僕は父のプロポーズの言葉を知らない」ブックを読む限り、複雑な物語展開なのかと身構えていたが、とてもわかりやすい物語だった。この時点で、なんとなく今までのフルタ丸とは違いを感じる。随所に仕掛けを盛り込み、観客によい意味の緊張感を持たせる、今までのフルタ丸はそんなお芝居が常だった。それはそれで楽しい、しかし、今回のお芝居は違う。物語は複雑に流れていくが、観る側に丁寧に作られておりすんなり理解できる。

お芝居中程で物語の全容が見えてくる、そして今回のお芝居がこれまでと決定的に違うポイントに気づく。役者同士の距離、それが本当にリアルなのだ。距離と言ってもステージにおける立ち位置という絶対的な距離ではなく、相対的とも言える役者同士の距離のことである。物語の登場人物同士の感情が込められた距離感、これがお芝居における100%の距離感なのではないか。セリフ・動作・表情、そこに個々の役者の距離感が重なると言葉にできないようなリアリティを生み出す。凄い領域に入っているぞ、劇団フルタ丸。

今回は個々の役者さんのお芝居について具体的には書かないが、真帆さんの佇まいに思わず涙があふれたシーンがある。物語が一気に加速する場面、この物語が結末に向かいはじめるきっかけのそのシーンが今でも頭に焼き付いており、それを思い出すだけでも胸が熱くなる。そのシーンは他に3人の役者がステージにいたが、やはりその距離感がたまらなかった。

最後に、初日が終わったばかりのフルタさんにもらったコメントを紹介したい。

フルタさん『初日が無事終わり、正直、安堵しています。いつも100%の自信でお芝居を作る一方で、不安も100%あるという心境でした。しかし、お客さんに作品を見てもらい、喜んでもらえたことを実感することができホッとしました。そして、初日にダブルコールをもらったことははじめてでしたので、本当にうれしかったです。』

劇団フルタ丸主宰フルタジュンさんと顔はめパネル

お芝居初日でのダブルコールを見たのは初めてだ。いつまでも鳴り止まない拍手に、6人は再びステージに戻ってきた。自分だけじゃない、あの時あの場所にいた私たちは、その気持ちを拍手で伝えたかったのだ。

劇団フルタ丸は劇団として到達すべき所に至った、それを自分自身で確認することができたからこそ改めて言いたい。劇団フルタ丸 第24回公演 『僕は父のプロポーズの言葉を知らない』は、絶対に観る価値のあるお芝居だ。演劇の可能性、それを実感することができるお芝居だ。演劇ファン、演劇関係者、とにかく1人でも多くの演劇に関わる人たちに観ていただきたい。そう、演劇の聖地『下北沢』で、劇団フルタ丸を観ていただきたい。

劇団フルタ丸 第24回公演 『僕は父のプロポーズの言葉を知らない』 フライヤー

【劇団フルタ丸 第24回公演 『僕は父のプロポーズの言葉を知らない』】
[公演日程] 2015年5月27日(水) – 5月31日(日)
[会場] 下北沢小劇場「B1」 (北沢2-8-18 北沢タウンホール地下1階)
[開演日時] 5/27(水) 19:30
5/28(木) 19:30
5/29(金) 14:00
5/30(土) 14:00、18:00
5/31(日) 14:00、18:00
(受付開始は開演の45分前・開場は開演の30分前)
[料金] 前売:3,500円
当日:3,800円
学生割引:2,500円 (学生証提示)
※前売り日時指定・全席自由
[作・演出] フルタジュン
[出演] 宮内勇輝
真帆
篠原友紀
工藤優太
清水洋介
フルタジュン
[スタッフ] <照明・広報> satoko
<音響> 前田真宏
<音響プラン> 水野裕
<音楽> 平野智子
<舞台美術> 泉真
<写真> 木村健太郎
<撮影> 株式会社アンダンテ
<演出助手> 寺山義教/佐藤すみ花
<宣伝美術> 山下隼太郎
<制作> 丸山立/三村大作
<企画・製作> 劇団フルタ丸
[特設Webサイト]
http://dp02026338.lolipop.jp/24tokusetsu/24tokusetsu.html

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クロダマサノブ

下北沢の音楽や演劇、イベント、そして飲食店などの情報を勝手に紹介。アタラシイ下北沢の魅力をいち早くお伝えします [Twitter]ymkx

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