M&Oplaysプロデュース『皆、シンデレラがやりたい。』

男性アイドルを追いかける40代女性3人、アイドルをやっているその男性アイドルの彼女、とそのマネージャー。3人と、2人と、もう1人の6人が織りなす、アイドルとファン、の複雑怪奇な物語。『皆、シンデレラがやりたい。』というお芝居の内容を簡単に表すと、およそこんなお話し。

しかし、本多劇場のステージで繰り広げら自分が目にした世界は、こんな少ない文字数では解説することはできない。とんでもない量の情報が飛びかい、女と女、女と男、それぞれの複雑な想いが絡み合う。そこにツイッターというツールが加わり、混沌さに輪をかける。膨大なセリフと人と人の関係性、それらが複雑に絡み合っているにもかかわらず観劇後には不思議な爽快感を味わえます。作・演出を手がけ役者としてもステージに立つ根本宗子さんと5人の役者さんによって創り出された世界、、、いや世界と言うより、どちらかというと嵐に近いかも知れない。そう、6人が生み出した嵐のようなものに襲われ、その嵐が過ぎ去った感覚。それが、自分が感じた爽快感の源なのでしょう。ラストシーンのもう完全にやりきった感も、爽快感につながっています、愛です全て愛ゆえなのです。

このお芝居はステージに立つ誰かを追いかけたことがある人と、そうでない人とでは受ける感覚が違うかも知れません。私はどちらなのかというと、追いかけたことがある側、というよりは今現在も追いかけている側。だって、つい4日前まであるバンドを追いかけ下北沢を離れ、九州から広島、神戸、そして北海道まで追いかけていたくらいだから。この物語に登場する追っかけの3人とは40代という年齢まで合致するけど、決定的な違いは自分が男であること。そう、女と男は決定的に違う、だからこそこのお芝居の中で繰り広げられる世界がわかる部分もあればわからない部分もあり、より自分に衝撃的な事実として襲いかかってきます。やー、もー、おんなのひとはこわいわっ。

とは書きましたが、追いかけたことがある人にとっては既視感的な感覚、そしてそこまで何かを追いかけたことがない方にとっては「う、うわぁ、、、」的な感覚(?)で楽しめるお芝居です。あと、ツイッターが生まれたからこそ、アーティストとファンの関係性がさらに複雑になったんだろうなぁ、と改めて思いました。ああ、今日も劇場の外で同じ様なことが繰り広げられていることでしょう。

そうそう、劇中に下北沢のとあるライブハウスの名前が出ます。ライブハウスに行かない人にはピンとこないかもしれないけど、この街のライブハウスに足を運ぶ人なら誰もが知っていて、200人も入ればギュウギュウになる広さのハコ。でも、その場所を経てこれまでも多くのバンドやアイドルがより広い世界に羽ばたいている、そう、彼らが乗り越えていく場所でもあります。そのあたりのリアリティが、自分には輪をかけて刺さったポイントです。

このお芝居は、多くを語らず行間や空気で何かを伝えようとするお芝居とは真逆であり、全てを、頭の中と心の中にある全てをさらけ出して相手に突きつける。突きつけられた相手も、同様に相手に返す。だからこそ情報量は多いけど、決して理解が難しい話しではありません。それは6人の役者それぞれの演技あってこそ。あと、笑いすぎでおなかが痛くなりました、壁を叩きながら笑ったのははじめてだ、、、。

まさに、本多劇場で観るべきお芝居。これまでたくさんのお芝居をこの街で、そしてこの劇場で観ましたが、本当にそう思えるお芝居に出会えました。初日なのに3回のカーテンコール、ここまで拍手が鳴り止まないお芝居ははじめて経験しました。

第27回下北沢演劇祭参加作品「M&Oplaysプロデュース『皆、シンデレラがやりたい。』」は、本多劇場にて2月26日(日)まで。

公式パンフレット(1000円)は、このお芝居をさらに楽しむためには必須です

M&Oplaysプロデュース
『皆、シンデレラがやりたい。』
第27回下北沢演劇祭参加作品

[上演期間]
2017年2月16日(木)~2月26日(日)

[場所]
本多劇場(北沢2-10-15)

[作・演出]
根本宗子

[出演]
高田聖子
猫背 椿
新谷真弓
新垣里沙
小沢道成
根本宗子

[開演日時]
2/16(木) 19:00
2/17(金) 19:00
2/18(土) 14:00、19:00
2/19(日) 14:00
2/20(月) 《休演日》
2/21(火) 19:00
2/22(水) 14:00、19:00
2/23(木) 19:00
2/24(金) 19:00
2/25(土) 14:00、19:00
2/26(日) 14:00
開場:開演の30分前

[料金]
全席指定 前売・当日共¥5,500
※未就学児童入場不可

公式Webサイト

About the Author

クロダマサノブ

下北沢情報サイト【しもブロ】のキュレーターです、キュレーターってなんやねんって?下北沢のありとあらゆるモノをキュレーションしています。下北沢の街にたどり着いて25年、常に変化し続けるこの街のことを見続け、下北沢のイマを伝えています

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