今年も春が来て、下北沢に新しい人たちがやってきます。
私がこの街にはじめて足を踏み入れたのは1997年4月のことでした。愛知県豊川市から京都の大学に進学し、地元には戻らず東京で就職。勤務先からのアクセスを考え新百合ヶ丘に引っ越し、通勤時間帯には遅延が当たり前の小田急線で都心に通勤していました。
ある日の帰宅時、特に用事は無かったのですが、下北沢駅で電車を降りました。当時の小田急線は地上を走っており、ホームから階段を上がり二階の改札を抜け右側が北口で左側は南口に繋がっていました。南口の階段を降り、はじめて下北沢という街へ。平日の夜にもかかわらず人があふれにぎわっていた記憶があります。あの日は散々街を歩いた上に当然のように迷子になり、何も買わずに再び小田急線にのり新百合ヶ丘に帰りました。
今振り返ると、あの日、下北沢に足を踏み入れたのがこの街との関わりのはじまりでした。黎明期だったインターネットに関する仕事をしていたこともあり、極めて多忙な日々を繰り返していましたが、たまの休みには下北沢の街を歩き回っていました。歩いているだけで楽しい街、この街の説明に最もふさわしい表現だと思います。あの頃とはハードもソフトも変わってしまったけど、その印象は今も変わらずこの街を表しています。
新百合ヶ丘から下北沢に引っ越してきたのは2000年のこと、会社を退職しフリーランスとして仕事をしていましたが、会社員時代からライブハウスに通っていたこともあり、下北沢に自宅兼事務所を構えました。本格的にこの街と関わりはじめ18年が経ち、再びこの街で春を迎えました。
2018年3月小田急線の複々線化が完了し、電車の本数が格段に増え混雑もある程度緩和され目的地までかかる時間も短縮化されました。下北沢駅は地下2階建てのホームとなり、2019年完成予定の駅舎の工事が進められています。それに伴い長年親しまれていた南口が廃止となり、仮北口と新たにできた南西口、そして井の頭線の西口という不便な状態になっています。ただ、しばらく続いていた下北沢駅の工事はこれが最終段階、来年の春には新しい下北沢駅が完成、新たな改札として中央口と東口が設けられ、街とのアクセスがしやすい駅として生まれ変わります。
「昔の下北沢が好きだった」
これまでもそしてこれからも多くの人に言われるであろう言葉、もちろん私もそう思う事はいくつもあります。様々なお店がこの街から姿を消し、下北沢のカオス感の代名詞、北口に拡がっていた駅前食品市場も無くなってしまいました。しかし、新しくできる興味深いお店や、新たにこの街で何かをはじめようとしている人も続々と現れています。新たに下北沢に生まれる駅前の空間では、今までの下北沢ではできなかったイベントを開催することもできるでしょう。個人的には新しい下北沢に対する期待は、過去の下北沢に対する想いを上回っています。
これまでも、そしてこれからも「下北沢、この街で生きる」立場として、この街の過去と今、そして未来をしっかりと伝えていきたい。そんな気持ちを形にするため、不定期で下北沢に関するコラムをお送りします。
上京し新生活がはじまったばかりの人たちにとって、初めての週末を迎えます。まだ、駅も工事中ですが、ぜひ下北沢にお越しください。ようこそ! 下北沢へ!