下北沢を舞台に一人の青年と四人の女性たちを描く“街”の恋愛群像劇作品『街の上で』が 、2021年4月9日(金)から全国で公開されます。
元々、2020年5月に公開予定でしたが1年延期、ついに全国の映画館で公開を迎えます。映画『愛がなんだ』『アイネクライネナハトムジーク』、そして2020年に入り『mellow』『his』と立て続けに話題作を世に送り出している、今泉力哉監督の最新作。変容する“文化の街”下北沢を舞台に紡ぐ、古着屋と古本屋と自主映画と恋人と友達についての物語。『愛がなんだ』ナカハラ役が話題を呼んだ「若葉竜也」初主演作です。
【ストーリー】
下北沢の古着屋で働いている荒川青(あお)。青は基本的にひとりで行動している。たまにライブを見たり、行きつけの古本屋や飲み屋に行ったり。口数も多くもなく、少なくもなく。ただ生活圏は異常に狭いし、行動範囲も下北沢を出ない。事足りてしまうから。そんな青の日常生活に、ふと訪れる「自主映画への出演依頼」という非日常、また、いざ出演することにするまでの流れと、出てみたものの、それで何か変わったのかわからない数日間、またその過程で青が出会う女性たちを描いた物語。
一足先に『街の上で』を観ましたが、まず一番最初にお伝えしたいのは完全に下北沢だったこと。そう、どう考えても下北沢でした。オール下北沢ロケで、 映像の中に登場する古着屋と古本屋、そしてライブハウスに映画館、カフェ、バー、全てが下北沢で今日も営業しているお店であり、下北沢の路上ですので、当然下北沢を感じる作品なのです。が、これはどう表現するのが適切なのかわかりませんが撮影した場所が下北沢ということを超えて、映像全てから下北沢がにじみ出た作品なのです。そういう意味ではこれまで自分が観てきた、下北沢を舞台としたどの映像作品よりも下北沢だと断言できます。
この作品はなぜここまで下北沢なのか、それは舞台となっている場所以上に登場する人物がみんな本当に下北沢にいてもおかしくないキャラクターだから。古着屋で働く荒川青(若葉竜也)をはじめとして、元恋人の雪(穂志もえか)や古本屋の店員である田辺(古川琴音)、自主映画を撮影している町子(萩原みのり)とイハ(中田青渚)、誰もが普通に下北沢にいても不思議でない存在だからです。
では、『街の上で』は下北沢が全ての作品なのかと問われれば、それは明らかに違います。下北沢という“街の上で”生きる人たちの話であり、この街にいる人たちのつながりを目に見える形にした作品です。
人が集まれば、人と人との間につながりが生まれます。家族に始まり、学校や会社、人は生きていく上で様々なコミュニティに関わります。下北沢で生きていると、この街に緩やかなつながりによって生み出されているコミュニティがいくつも存在していることを感じます。深い付き合いの友達から、行きつけのお店で会話を交わす店員さんや常連さん、お互いなんとなく顔は知ってるけど話をしたこともなく何をやっているのかは分からない人。それぞれが緩やかにつながり、下北沢という“街の上で”コミュニティを作り出していることを実感しています。
『街の上で』で描かれているコミュニティは、もちろん自分とは繋がっていません。でも、そんな人たちが存在してもおかしくないということを、私は信じて疑いません。
よく、下北沢の街にとって何が魅力なのかを聞かれます。ずいぶん長い間、この問いに対して明確な答えを持っていませんでしたが、この作品を観て回答にたどり着いたと思います。下北沢の街の魅力は、下北沢にいる人たちによって生み出されている、この“街の上で”生きる人たちが作り出している。これからはそう断言することにします。
話が大幅に下北沢に傾いてしまいましたが、『街の上で』は人と人とのつながり、そして、人と人とのすれちがい、この2つの要素がとても丁寧に描かれている作品です。
恋愛はもちろんですが、人のことを想うことも含め、愛が生み出す様々なシーンがこの映画にはたくさん詰まっています。時に愛は人をおかしくしてしまうこともあり、そんな部分も含め時に優しく、時にユーモアに人と人の姿が描かれている作品です。
実は『街の上で』を観てから、どうにも今泉監督の事が気になってしまい、同じく今泉監督の3作品『his』と『mellow』、そして『あの頃。』を観ました。どの作品も一言では語れない魅力的な作品ですが、『街の上で』も含めた4作品に共通していることは“愛”です。今泉監督の作品は恋愛映画というくくりにされていることを目にしますが、私は単に恋愛ではなく“愛”という言葉で飾りたいと思います。
『街の上で』も様々な愛が描かれています。下北沢の街の上で飛び交う様々な愛、そのことを納めた映画です。また、2019年の下北沢の街が記録されている作品でもあります。小田急線が地下化され線路跡地の開発が進む下北沢ですが、まさにその最中である街の姿も納められています。下北沢が好きな方は、ぜひ劇場で観ていただきたい作品です。
下北沢と今泉監督のことばかり書いていて、肝心のキャストに全く触れていない、、、。主演の荒川青を演じた若葉竜也さん、下北沢という街にどっぷりと染まっている様や、そして4人の女性に翻弄されまくる様も含め、見事に演じきっていました。お店で本を開きながらたたずんでいるシーンの自然さたるや、本当に下北沢で見かけてもおかしくない雰囲気でした。
そんな青に関わる4人の女性がこれまた皆さん魅力的。本当に魅力的で4人とも紹介したいのですが、あえて一人に絞るとすれば自主制作映画の衣装を担当する城定イハ役の中田青渚(せいな)さんがとにかく素晴らしかった。やわらかな雰囲気を持ちつつ筋の通ったキャラ、彼女の等身大の演技が、この作品のリアリティをより高めてくれていました。とても魅力的な役者さんで、今後もチェックしたいです。
映画『街の上で』は2021年4月9日(金)公開、「新宿シネマカリテ」「ヒューマントラストシネマ渋谷」「立川シネマシティ」など東京の劇場をはじめとして、「シネマ・ジャック&ベティ(神奈川)」「センチュリーシネマ(愛知)」「出町座(京都)」「テアトル梅田(大阪)」「イオンシネマ シアタス心斎橋(大阪)」「サツゲキ(北海道)」「シネプラザサントムーン(静岡)」「KBCシネマ(福岡)」にて上映されます。
いつか下北沢でも上映されるかな、やっぱり下北沢で見たいですね。下北沢で『街の上で』を観て、そのままこの作品で描かれたお店に足を運びたい気持ちで一杯です。
※写真は全て、©『街の上で』フィルムパートナーズ
『街の上で』
出演:若葉⻯也、穂志もえか、古川琴⾳、萩原みのり、中⽥⻘渚、村上由規乃、遠藤雄⽃、上のし
おり、カレン、柴崎佳佑、マヒトゥ・ザ・ピーポー(GEZAN)、左近洋⼀郎(ルノアール兄弟)、
⼩⽵原晋、廣瀬祐樹、芹澤興⼈、春原愛良、未⽻、前原瑞樹、タカハシシンノスケ、倉悠貴、岡⽥
和也、中尾有伽、五頭岳夫、渡辺紘⽂/成⽥凌(友情出演)
監督:今泉力哉
脚本:今泉力哉 大橋裕之
撮影:岩永洋
録音:根本飛鳥
美術:中村哲太郎
⾐裳:⼩宮⼭芽以
ヘアメイク:寺沢ルミ
助監督:滝野弘仁 平波亘
スチール:⽊村和平 川⾯健吾
音楽:入江陽
主題歌:ラッキーオールドサン「街の人」(NEW FOLK / Mastard Records)
製作:遠藤⽇登思 K.K.リバース 坂本⿇⾐
プロデューサー:髭野純 諸田創
ラインプロデューサー:鈴木徳至
制作プロダクション:コギトワークス
特別協⼒:下北沢映画祭実⾏委員会/下北沢商店連合会
製作幹事:アミューズ
配給:「街の上で」フィルムパートナーズ
配給協⼒:SPOTTED PRODUCTIONS
2019/日本/カラー/130分/ヨーロピアン・ビスタ/モノラル ©『街の上で』フィルムパートナーズ
■公式サイト https://machinouede.com/
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