オジキタザワ オジキタザワ

映画『オジキタザワ』レビュー、下北沢のおじさんを描いた理由

「これもリアルなシモキタだよな」

K2の客席が明るくなり、現実に引き戻された瞬間に浮かんだ思いだ。

下北沢とおじさん、それがどんな存在なのか、自分自身がまさに下北沢にいるおっさんだからよくわかる。なぜ、おじさんが下北沢に居つづけるのか疑問に思う若者は多いだろう、その理由はこの映画を観れば理解できる。え、おじさんになんて興味ないって? それはもったいない、この街にいるおじさんたちは、夢の続きを観ている人たちなんだ。まあ、面倒くさい人ばっかだけどな、うわーだるっ! そんな、下北沢とおじさんの関係をリアルでありながらファンタジックに描いた作品、それが映画『オジキタザワ』なのです。

サブカル、私はこの言葉を下北沢に対して安易には使わない。しかし、この映画『オジキタザワ』に対しては敬意を表して使いたい、下北沢のサブカル感をここまで醸し出している作品は存在しないだろう、サブカルは泥臭いんだよ! 演劇、居酒屋、カレー、カフェバー、ライブハウス、路上、怪しすぎるバー、、、いや、飲食店多くね? 多いんですよ飲食店、古着屋よりも多いんだよ。そして、この作品を観ている場所は下北沢のミニシアター。下北沢のサブカルチャーをひとまとめにして描いた作品、それも映画『オジキタザワ』なのです。

下北沢を舞台とした映画はたくさんあるが、しもブロでも幾度となく取りあげた『街の上で』が最もリアルな下北沢を表現した作品だと思っていた。あの作品では下北沢という街が、そこにいる人と人との繋がりによって創り上げられていることを描いていたが、その点では『オジキタザワ』も変わらない。まあ、シチュエーションも表現の仕方も全く違っているけどな。あの作品に描かれた下北沢と、この作品で描かれている下北沢、そのどちらもが存在している街、それが下北沢という街なのである。パラレルワールドでもなんでもない、現実に存在する下北沢のリアルのうちの1つを描いた作品、それが映画『オジキタザワ』なのです。


正直、ミュージカルという表現が苦手だったのですが、それは単なる思いこみだったのかもしれない、歌って踊るからこそできる表現の可能性を思う存分感じることができました。下北沢駅前でのシーンは圧巻。下北沢駅前と下北線路街 空き地、どちらも将来的には大きく変わってしまうであろう場所であり、2022年の下北沢を収めた貴重な作品となるでしょう。そして、表現としては映画なのですが、どことなく劇場で演劇を観ているような感覚になる作品でもあります。

いやー、それにしても主演の平川はる香さんは大変だっただろうなぁ、ほとんどのシーンに出ていることに加え、それぞれのシーンの特異性が半端ない。まさか、下北沢の路上で転げ回る事になるとは(1番好きなシーン)。様々な表情を見せてくれましたが、やはりラストが最高です。出てくるおじさんはどの人も濃すぎるキャラでもうお腹いっぱいですが、やはり小川ガオさんが演じていたおじさんが最もヤバかった。というかですね、このキャラってもしかして下北沢に実在している人をモデルにしてません? いるんですよ、全く同じ雰囲気の人が。真相やいかに。あと、安住啓太郎さんの役が猛烈にツボりましたが、詳細を語ることはできない、、、。出演した全ての役者さんのキラキラ感がスクリーンからあふれ出てくる、まさに下北沢の街をそのまま表していると言えるでしょう。

この作品はシモキタ – エキマエ – シネマ「K2」で2日間だけ上映されます。しかし、どう考えても2日間で終わらせてはならない作品です。たくさんのアーティストやクリエイターがこの街から広い世界に羽ばたき続けているように、この作品も下北沢の街に留まらせるのはもったいない。ぜひ、この作品も世界に向け飛び立つことを願います。もちろん、引き続き下北沢でも上映して欲しい作品、それが映画『オジキタザワ』なのです。

演劇✕映像の新感覚ミュージカルフィルム『オジキタザワ』
演劇✕映像の新感覚ミュージカルフィルム『オジキタザワ』

映画『オジキタザワ』

夢見る「おじ」が歌って踊るミュージカル

〈ストーリー〉
終電が終わりを告げる。場所はいつもの下北沢。
飲んだくれて、その扉を開けば、
そこには夢を持ったおじさん、「夢おじ」たちが暮らしていた。

下北沢に迷い込んだ主人公アユムが、夢おじたちと過ごした、
ある一夜のなんか変なお話し。

「だから嫌いなんだよ」と、アユムが下北沢を嫌う理由は?
謎のおじさんの正体は?

細かいことは気にせずに、
飲んで、歌って、踊って、そんな間に課題は解決している、かもしれない。
きっとあなたの近くにも、夢おじがいるでしょう。
怖くないから、ゆっくりと近づいてみよう。
きっと、何も変わらないけど、そういうこともあって良いんだって思うはず。

出演:
平川 はる香
原口 紘一 / 岩間 由明 / 近江谷 太朗 / 妹尾 正教 / 富士 たくや / 中山 利一 / 鈴木 喜明
西川 康太郎 / 阿部 博明 / 河野 新大陸 / 入間 史雄 / 吉成 豊 / 安住 啓太郎 / 山本 真敬 / 田中 温子 / 中井 健勇 / 悦永 舞 / 三上 由貴 / 石垣 エリィ / みしゃむーそ / 行成 小夏 / 中尾 ちひろ / 志波 昴星 / 辰巳 ありさ / 佐々木 タケシ / 辻 はるか / 福田 らん。 / いのまた 有古 / 下石 知美 / 生井 みづき / 麓 有希 / 長尾 舞夢 / 河西 美季 / 白神 さき / 内田 祐里香 / 利根川 鈴実
主題歌:エンディングテーマ「夢を見ている」時速36km
監督・編集:藤本匡志 (BIS)
プロデューサー:丸山千弥 (BIS) / 石垣エリィ(エリィジャパン)
脚本:松森モヘ― (中野坂上デーモンズ)
撮影:宝智陽志郎 (PICTCORE)
照明:山崎公彦 (PICTCORE)
録音:住川隼太(テクニカランド) / 野呂博
美術:根岸美由紀(JETS)
衣装:綾部秀美
ヘアメイク:TATSU/佐藤かなこ/岸本愛美
音楽:山下永眞
歌唱指導:池田海人(エリィジャパン)
振付:西川康太郎(ゲキバカ/おしゃれ紳士) / TSUJIKO
ダンス指導:行成小夏(エリィジャパン)
演技指導:小林涼太 (PISTONS)
演出補:金森優依 / 加藤明花 / 大西彰子
制作進行:坂井宏美(BIS)
イラスト:デイジー・デイジー
宣伝商材:大口葉
グラフィックデザイン:藤尾勘太郎
スチール:保坂萌
Webサイト:大村文乃
企画・制作:BIS+エリィジャパン
公式Web
公式Twitter