[レビュー]下北沢ダイハード 第9話『幽体離脱した男』

7月にテレビ東京系で放送が始まった下北沢を舞台にしたドラマ【下北沢ダイハード】。

すでに第9話の放送が終わり、残るお話は2話。全体的に下北沢という街の特長を生かしたコメディテイストの話が多かったのですが、第9話はちょっと他とは違うファンタジーテイストな内容でした。放送後1週間限定で見逃し配信も行われています(9月22日24時51分配信終了)。

★☆★下北沢ダイハード 第9話 『幽体離脱した男』@ネットもテレ東★☆★

第9話の舞台は実際に下北沢にある「劇」小劇場、下北沢で最も足を運んだ小劇場だということもありますが、なぜか今回のお話がとても心の残る内容で、テレビ放送後も何度も見逃し配信でドラマを見直しました。公式サイトにも第9話のストーリーが掲載されていますが、自分なりに詳細なあらすじをまとめますね、めっちゃネタバレです。

アイドルグループ「エアーズ」のメンバー・タクヤ(金子大地)はグループ内で唯一レギュラーを持っておらず、事務所の社長(井上肇)からアイドルが出るような舞台ではなく、下北沢の小劇場で行われる舞台に出演し、結果を残すよう告げられる。

タクヤは新下北沢シアター8(「劇」小劇場)で行われる劇団「下北沢ウエストゲートパーク」の第20回公演『幻』の主演として舞台初日を迎えた。しかし、本番直前まで演出家の砂原(岩松了)による演技のダメ出しを繰り返され「感情をむき出せ」と言われててしまうが、その演技指導を素直に受け取ることができない。

そんな中、ちょっとした怪奇現象が起き、劇団員から『劇場霊』の存在を聞かされる。冗談だと真に受けていないタクヤだったが、誰もいない楽屋で足を滑らせ頭を強打し気絶。意識を取り戻したタクヤだったが、スタッフに声をかけても無視されてしまい、さらには鏡に自分の姿が映らないことに気がつく。ふと足下を見ると、そこにはタクヤの体が、、、本番まであと1時間というタイミングで幽体離脱してしまったのだ。

必死に自分の体に戻ろうとしたタクヤだが、そう簡単に戻ることはできない。劇場内にいるスタッフに助けを求めるが、タクヤの声は誰にも聞こえない。そんな中、タクヤはこの劇場の紗奈(岸井ゆきの)に声をかけられる。誰にも見えないはずなのに自分の姿が見える紗奈の存在を不審がるも、今はとにかく本番に間に合うように体に戻るため、彼女に協力を仰ぐ。しかし、様々な方法を試すも、体に戻ることはできない。

そうこうしている間に劇場は開場し、そこに事務所の社長もやってくる。社長や客席にいるお客さんにちょっかいを出す紗奈を観て、やっと彼女が幽霊であることに気がつく。そう、彼女こそが『劇場霊』だったのだ。このままでは自分も『劇場霊』になってしまう、さらに焦るタクヤだったがなす術もない。楽屋では役者達が、アイドルで演技力に対して疑問視し、揶揄している。

自分も舞台で演技をしたいわけじゃないと楽屋を飛び出すタクヤ、そんなタクヤに実際にはどう見られているのか伝える紗奈。さらに、舞台に連れ出しタクヤに台詞を言うよう促す紗奈。「幽体離脱が戻らないのは、心の底では現実に戻るのが怖いから」、そう言われ舞台で台詞を言うタクヤ。しかし、演出家の砂原と同じく紗奈の口からもダメ出しが、、、。ふと、気がつくとタクヤは高校一年生の時、初めての彼女・シオリ(大阪美優)に振られた場面だった。

タクヤは心から好きだったのに、彼女にその想いは伝わらず振られてしまう。自分の好きだという想いが伝わらなかったことから、本当の自分の気持ちを言葉にすることができなくなってしまった。もしあの時ちゃんと気持ちを伝えることができていたら、、、。シオリの思い出を語るタクヤに、紗奈は本当の気持ちを言葉にするように促す。あの時言葉にできなかった想いを、はっきりとした言葉で言い放つタクヤ。その本当の姿を「最高だった」と評価する紗奈、自分も本気の恋をしたかったと言い残し、彼女は劇場から消えてしまった。

共演者に声をかけられ気がつくタクヤ、本番10分前に体に戻った彼に迷いはなかった。感情をむき出した演技に、社長も含め客席の誰もが釘付け、共演の役者達も認めざるを得ないような演技をタクヤは見せることができた。

本番を終え楽屋に戻り共演者やスタッフによかったと声をかけられる、さらにはめったに褒めない演出家の砂原にも褒められ、ほっとするタクヤ。ふと、紗奈の存在を思い出しスマホで彼女のことを調べる。彼女は本番前日に亡くなっていたことを知り、さらにプロフィールの好きな芸能人の欄に自分の名前が書かれていることに気付く。一連の出来事に納得し、すがすがしい表情を見せるタクヤだった。

こうやってストーリーを振り返ってみると、本当によくできたお話だと改めて実感しました。そもそも、タクヤが幽体離脱してしまったのは紗奈の仕業だったのかもしれない、それは彼に演技とはどういうことなのかを伝えたかった彼女の想いだったと。死んでしまってから3年、そんな時に自分の憧れの存在であるタクヤが棲みついている劇場に現れ、演技で苦しむ姿を見て居ても立ってもいられなかった、そういうことだったのでしょう。

このストーリーはそのままお芝居として上演できるような内容、そう、まさに劇場で観るようなストーリーだと思いました。そして、そんな作品をドラマにする、舞台ではできないテレビだからこそできるそんな作品でした。

タクヤを演じる金子大地さんの演技ができない演技、そして、紗奈を演じた岸井ゆきのさんのコミカルでちょっとオーバーな演技、この2人の組み合わせがシリアスなのにコメディーな雰囲気を漂わせるファンタージーテイストを生み出してくれました。それにしても岸井ゆきのさんの、超ステレオタイプ的な幽霊としての動きがツボにはまりました。

そして舞台となった「劇」小劇場は現在改装中、この改装に入る直前の期間に撮らせてもらったのでしょうね。確か耐震補強工事を行っているとのことで、11月中旬にリニューアルオープンします。もしかしたら劇場内も変わってしまったのかもしれませんが、今回のお話を観て改めて「劇」小劇場でお芝居を観たくなりました。ちょっと不思議なことが起きても、特に心配しないようにします。

そして、本日9月22日24時12分から放送される第10話『悪魔にとり憑かれた女』は、第9話の舞台「劇」小劇場から徒歩30秒の場所にあるライブハウス「ろくでもない夜」が舞台で使われているようです。演劇に続いて音楽、どうやら今回も下北沢感満載なお話を観ることができそうです。ってか、先週は幽霊だったけど、今週は悪魔にとりつかれるのね、、、。