『ハルをさがして』 尾関監督・内藤プロデューサーインタビュー

『ハルをさがして』 キービジュアル

2016年8月6日(土)からトリウッドで公開される『ハルをさがして』。映画についてはすでにこちらの記事で紹介しましたが、この映画を手がけた脚本・監督の尾関玄さんとプロデューサーの内藤諭さんにお話を伺いました。

左:尾関玄監督、右:内藤諭プロデューサー
左:尾関玄監督、右:内藤諭プロデューサー

---この映画を作る切っ掛けとなったエピソードからお伺いしたいのですが、その前に尾関さんと内藤さんお2人が作られたISHIOについてお聞かせください

尾関玄監督(以下、尾関): 内藤とは愛知県春日井市にある石尾台中学校の同級生で、その当時仲がよかった7人組で自分たちのチーム名として「ISHIO(イシオ)」とつけたのが起源です。ビデオレンタル屋も無いような田舎でしたが、中学校1年生の時にビデオレンタル屋さんが開店し、そこでビデオを借りてみんなで観たりしていました。その時の仲間と夢とかを語り合っている時に、「俺ら東京に出て映画撮ろうよ」みたいなことを話していましたね。そして、東京に出てきて僕は日本映画学校(現日本映画大学)という映画の専門学校に行き、内藤は拓殖大学という偏差値の低い大学に行って、

内藤諭プロデューサー(以下、内藤): こらこら(笑)

尾関: 自主映画という形で「ISHIO」として撮影していました。学校の映画の実習をやりつつ、それとは別で内藤と上京してきた中学時代の友人と撮っていましたね。その後、お互いに学校を卒業して、プロフェッショナルな映画の現場に入りました。お互いプロとして仕事をし10年経ったこともあり、自分たちが作りたい映画を撮ろうというところから始まりました

内藤: 「ISHIO」と名乗ってはいますけどメンバーは僕と尾関だけですね

---元々中学生が主人公となる作品を作るべく動き始めていたところに、東日本大震災が発生。その後、福島を舞台とした映画としての製作が始まります。撮影を行ったのはいつ頃でしょうか

内藤: 撮影は2014年8月で、ロケハンなどで動き始めたのは6月頃ですね

---福島県いわき市周辺が舞台となりますが、この場所を選ばれた理由についてお聞かせください

内藤: まず、劇中にも出てくる福島県いわき市にあるペットシェルター「LYSTA」に問い合わせ、監督と2人で直接話しを聞きに行ったのがきっかけです。その際に撮影についても許可頂き、そのことからいわき市周辺で撮影することになりました

尾関: あと、仕事上の先輩が福島県で「こども映画塾」という活動をされていて、その活動は福島県のみなさんと一緒に映画を撮るもので震災前から活動をされていたのですが、その先輩に相談したところいわき市に様々な繋がりがあり、地元の方を紹介頂いたということもあります

「ハルをさがして」監督の尾関さん

---「LYSTA」のシーンでの犬の表情は本当に印象的です

内藤: 帰還困難区域から保護された犬たちですね。一般の人が入れない場所に「LYSTA」のスタッフが出向き、保護した犬たちですね

尾関: そこは強制的に避難させられた地域ですね。突然の避難で、ペットを連れて行けない人たちも多くいらっしゃったと思います。「LYSTA」の光景そして犬の表情は特に何かをしたわけではありませんが、ありのままを撮影することで誰にも現実を突きつける、説得力があるものとなりました

---キャストについてはどのように決められたのでしょうか

内藤: オーディションですね

---ヒロインのチエコ役は佐藤菜月(さとう なつき)さんが演じられています、彼女に決めた最大のポイントをお聞かせください

尾関: チエコ役の選考は難航しました。多くの方に応募頂き、書類選考そしてワークショップを経て、佐藤さんを含め2人に絞りました。実は、オーディション中にビデオカメラを回しており後でその映像を確認したのですが、そこに映る彼女の佇まいが圧倒的でした。生で見てももちろんかわいい女の子ですが、不思議なもので画面を通して見るとさらに魅力的だったのが決め手ですね

内藤: 大半の人は逆で、実際にはカワイイのにカメラを通すとその魅力が伝わらないということがほとんどですから

『ハルをさがして』 作品より

---それでは、男のコ3人について。こちらも難航しましたか?

尾関: ヒロインほどは悩まなかったですね

内藤: 悩まなかったね

尾関: ヒロキとマサルはすぐ決まりました。ヒロキ役を演じている橋本一輝(はしもと  かずき)君については、見た瞬間に「キミ、イイネー」って

内藤: もう、オーディションで入ってきた瞬間に、「はい決定」となりました

尾関: マサル役の小泉凱(こいずみ がい)君については、空気を読まない感じでガンガンくる、その勢いが面白くて決めました。そして、主人公のノボル役についてはさすがに悩みましたが、いずれにしてもイケメンではないキャラだと考え、最終的に小柴大河(こしば たいが)君を選びました

『ハルをさがして』 作品より

---そして、小沢仁志さんと洞口依子さんというベテランのお2人が出演されています。圧倒的な存在感に、中学生役の4人の様子はどうでしたか?

尾関: いや、僕らがビビってました

内藤: 僕らが一番ビビってたよね、「組長が来た」って、、、

---中学生役の4人ではなく、お2人の方が緊張していたとは。お2人ともそれほど長いシーンではありませんが、この作品を創る上で極めて重要な役割を果たしていました

『ハルをさがして』 作品より

『ハルをさがして』 作品より

---次に、甲本ヒロトさんの「呼んでくれ」が主題歌となっていますが、これはどのような経緯で選ばれたのでしょうか

尾関: 私がよく立ち寄るバーでたまたま流れており耳にしたのが、この曲との出会いです。聞いたことある声だけど誰だろうと思いお店の人に訪ねると、甲本ヒロトさんの「呼んでくれ」という曲でした。当時、台本を書いていて煮詰まっていたのですが、歌詞が一人称で語っていて、ノボル君がチエコちゃんに語っているように、そんな風に聞こえました。そうだ、まさにこの歌詞で台本を書けばいいのだ、と。ですから、この曲に出会ったから、この台本がそしてこの作品ができたと言えるくらいとても重要な曲となりました。

そして、映画を撮り終えてから甲本さんの事務所に連絡をし、主題歌として使わせてもらうよう交渉しました。最初は断られてしまいましたが、どうしても諦めきれなく甲本さんへのお手紙と作品のDVDを改めてお送りしたところ、とりあえずご本人に渡してくれる事になりました。ただ、甲本さんが作品を見るかどうかは分からないと伝えられていましたが、数週間後に事務所の方から連絡を頂き、主題歌として使用する許可を頂きました。

---あまりに作品にマッチしていたので、もしかしたら作品にあわせて作られたのかと思ってしまいましたが、逆にこの歌があったからこの作品ができたということだったのですね。それにしても、甲本さんが「呼んでくれ」を主題歌として使うことを認めてくれたことは、本当にうれしい事ですね

「ハルをさがして」プロデューサーの内藤さん(右)---それでは、撮影時のエピソードについてお聞かせください。まず、撮影期間について

内藤: 撮影期間は、14日間です。1日だけ東京から福島への移動日で、撮影は13日間でした、その間休みはなかったですね。最初の4日間が東京、残り9日間が福島で、撮影が終了したのが8月31日でした

---4人の学生さんにとっては、夏休みの後半を完全に使っての撮影だったのですね。続いて、撮影時の印象的なエピソードをお願いします

内藤: 印象的なエピソードといえば、「ハル」を演じたわんちゃんが撮影中に脱走したこですね。「ハル」はいわゆるプロの犬ではなく、福島県小野町のとあるお宅で飼われていたわんちゃんで、何軒か交渉した中で一番お利口で絵になるわんちゃんを選びました。脱走したときには、まだ出演シーンが残っていたのでその瞬間に、「終わったな」と思いました。飼い主の方も含め、スタッフ全員で街を捜索して、、、

---え! 映画のタイトルの通り、本当に「ハル」を探しているじゃないですか!

内藤: ホントに探しました(笑)。でも、幸い1時間くらいで見つかりました。なんとなく「ハル」が脱走した原因もわかっていまして、朝からずっと撮影で、慣れてないことをさせていたので逃げ出してしまったのだと。これが一番印象的な思い出ですね

---キャストの皆さんについてはいかがでしょうか

尾関: この映画はほぼ順取り(ストーリーと同じ順番)で撮影しているのですが、最初はだらしない感じなのでのほほーんとやっててもらえばよかったのですが、福島に入ってからはストーリー的にも変わっていかなければならないので、そこからは男子3人には厳しく接していました

内藤: そうだったね

尾関: 現場以外ではあまり話さないようにしてましたね。だから、物語の中でも彼らは成長しますが、実際の撮影現場の中でも3人は成長していますね

---確かにラストシーンの彼らの表情を見れば、それは実感できますね。それでは、他には何かありますか

尾関: 撮影が始まる前の準備段階ですが、この台本で実際に福島で撮影するとなると、そのこと自体が緊張しました。この台本では協力出来ないという方もいらっしゃって、撮りながらも福島に住んでいる方や東京に避難されている方がどう思われるのか不安はありました。そういう意味では、公開されてからなのかもしれません、本当に緊張するのは

内藤: あと、印象的だったのが、撮影場所になった小野町の小野中学校で上映会を行った際の出来事です。映画をみたある生徒が、モニタリングポストについて東京の子はわからないことに驚いた、そう話してくれたことですね。そのくらい、福島で生活をする人たちにとって身近なことなのです、大気中の放射線量については。公園や公共の場所には絶対に設置されていますからね

 

「ハルをさがして」監督の尾関さん(左)、プロデューサーの内藤さん(右)

---この作品はどのような方に観て頂きたいですか

尾関: ありきたりですが、老若男女一人でも多くの方に観て頂きたいです。制作する前からお客さんを選ぶ作品にはしたくなかったこともあり、大人が見れば自分の過去経験した甘酸っぱい記憶を追体験でき、子供が見れば子供目線でひと夏の冒険が味わえる、そんな作品になっています

---夏休み中に公開されるので、思わず冒険に出てしまう中学生がいそうです

内藤: それは確かにあるでしょうね。若い方にも観て頂きたい作品です、高校生以下は1000円で見ることができますので

---それでは、最後にメッセージをお願いします

尾関: 夏休み中ですので、ぜひ学生の皆さんをはじめとして様々な年代の皆さんお待ちしております。描きたかったのは中学生のちょっとした成長の物語であり、小さな一歩で劇的に何かが変わるわけではないですが、少年少女の小さな一歩を見て頂きご覧頂いた方の背中を少しでも押せる作品になっています。ぜひご覧ください

---ありがとうございました

「ハルをさがして」監督の尾関さん(左)、プロデューサーの内藤さん(右)

[追加情報]
「ハルをさがして」上映を支援するためのクラウドファンディングも行われています。当日券よりも安い1500円で映画鑑賞券が1枚もらえるプランから、関係者打ち上げに参加できるプラン、自主上映権がもらえるプランまでありますので、こちらも併せてご覧ください。

『ハルをさがして』

(2015/93分)
出演: 小柴大河、佐藤菜月、小泉凱、橋本一輝、洞口依子、小沢仁志 他

脚本・監督: 尾関玄
プロデューサー: 内藤諭
音楽監督: 遠藤浩二
撮影監督: 栗田東治郎
録音・整音: 小牧将人
編集: 石川真吾
企画・製作・配給・宣伝: ISHIO

主題歌:「呼んでくれ」(甲本ヒロト)

震災後の福島を舞台に、<ひと夏の経験を通して成長する少年少女達>という普遍的なテーマを描く。 数々の映画祭で上映され、幅広い世代から支持を集めた本作は、尾関玄監督の長編デビュー作。 主なロケ地である福島県いわき市と福島県田村郡小野町ののどかな田園風景の中で、瑞々しく輝く中学生達の<誰にでもきっとある「あの夏の日」>を、ぜひ夏休みに劇場で体験して下さい。

映画『ハルをさがして』公式サイト
映画『ハルをさがして』Facebookページ
映画『ハルをさがして』Twitter

[劇場]
TOLLYWOOD(代沢5-32-5)

[上映スケジュール]
2016年8月6日(土)~8月26日(金)
12:30/14:30/18:30
※平日火曜定休

[料金]
一般 1,600円 / 大学・専門 1,300円 / シニア 1,100円
高校以下・障がい者 1,000円

『ハルをさがして』フライヤー裏面