第五回 下北沢映画祭 グランプリ上映会レポート

 

2014年10月11日から3日間の日程で開催される第六回 下北沢映画祭ですが、6月21・22日に下北沢・トリウッドにて『第五回下北沢映画祭グランプリ上映会』が開催されました。22日の上映会にお邪魔してきましたので、その模様をお送りします。

下北沢・トリウッド
トリウッド

下北沢駅南口から商店街を下り、王将の角を左へ。古着屋シカゴさんの脇にある階段を上がった2階に、下北沢唯一の映画館・トリウッドがあります。

トリウッドに以前来たのは10年くらい前かも知れない、、、
トリウッドに来たのは10年ぶりかもしれない

座席数47の小さいサイズのトリウッドですが、連日様々な作品が上映されています。トリウッドに来るのも久々ですが、ショートフィルムを観るのもかなり久しぶりです。

下北沢映画祭スタッフ作、トリウッドがどんな映画館なのか。黄色いイスにはそんな理由があったのですね
下北沢映画祭スタッフ作、トリウッドがどんな映画館なのか。黄色いイスにはそんな理由があったのですね

この日の上映会、第一部では第一回から第四回までの受賞6作品の上映、第二部では第五回受賞3作品が上映されました。

第一部の中で最も印象に残ったのは「最低」 (第二回準グランプリ作品・今泉力哉 監督・30分0秒)ですね。というか本当に最低なんです、この映画に出てくるアイツは、、、。女性とその元ストーカーの男、その男に好意を寄せる女、そしてストーキングされていた女性と同棲している男(←コイツが最低)、同棲男の浮気相手の女、さらにはストーキングされていた女性の妹がこの物語を彩ります。30分間という限られた時間の中で、こんな複雑な人物設定を描くというのは容易ではなかったと思います。最低野郎の最低っぷりが描かれつつも、物語に登場したとある2人に漂うどっちともつかない空気感を残したまま終わる、その見せ方が素晴らしい作品でした。

また、「オハヨー」 (第四回準グランプリ作品・佐久川満月 監督・15分)と「カリカゾク」 (第四回観客賞作品・塩出太志 監督・20分)は設定も内容も全く異なる作品でありながら、共にもどかしさと駆け抜けるようなスピード感を感じることができる作品でした。限られた時間の中で描かれる物語、ショートフィルムの魅力はそこにあるのだろうと改めて認識しました。

第一部の上映終了後、「向ヶ丘千里はただ見つめていたのだった」の植草監督、「最低」の今泉監督、「オハヨー」の佐久川監督、3名による舞台挨拶が行われました。

第一回グランプリ作品「向ヶ丘千里はただ見つめていたのだった」植草航 監督  『まさか受賞するとは思わず、上映後別件の打ち合わせに行ってしまい、実行委員会の方に「今すぐ戻ってください!」と言われました』
第一回グランプリ作品「向ヶ丘千里はただ見つめていたのだった」植草航 監督
『まさか受賞するとは思わず、上映後別件の打ち合わせに行ってしまい、実行委員会の方に「今すぐ戻ってください!」と言われましたことを思い出しました』
第二回準グランプリ作品 「最低」今泉力哉 監督 『脚本を書いたときのことを思いだしていたのですが、当時付き合っていた(現在の)嫁にストーリーを話していて、「妹も浮気している設定」というアイデアを組み入れました』
第二回準グランプリ作品 「最低」今泉力哉 監督
『脚本を書いたときのことを思いだしていたのですが、当時付き合っていた(現在の)嫁にストーリーを話していて、「妹も浮気している設定」というアイデアを組み入れました』
第四回準グランプリ作品「オハヨー」佐久川満月 監督 『実は映画がきっかけで、、、(会場に居た人たちだけのオフレコトークで)』
第四回準グランプリ作品「オハヨー」佐久川満月 監督
『実は映画がきっかけで、、、(会場に居た人たちだけのオフレコトークで)』

休憩を挟み第二部では、昨年開催された第五回下北沢映画祭の受賞作の3作品、「溺れるボレロ」 (第五回観客賞作品・奥田裕介 監督・20分11秒)、「端ノ向フ」 (第五回準グランプリ作品・塚原重義 監督・10分30秒)、「京太の放課後」 (第五回グランプリ作品・大川五月 監督・20分)がそれぞれ上映されました。

3作品の中で印象に残ったのは、第五回グランプリにも選ばれた「京太の放課後」です。実はこの作品、第五回下北沢映画祭のグランプリ以外に国内外の様々な映画祭で受賞している注目の作品でもあります。

『防災頭巾が目印の京太は10歳の男の子。ある日、彼の学校に震災後帰国していた英語教師 ティムが戻ってくる。』
下北沢映画祭公式サイトより

京太と英語教師のティム、そして京太の母親、そしてティムを取り囲む街の人たちが織り出す心温まるお話しです。京太がティムと交わす片言の英語による会話は、お互いが意思を伝えたいという気持ちからのコミュニケーションであり、話す言語は異なっていても想いは伝わるとことが見事に映像化されています。
震災がテーマでありつつ、それを深刻な出来事としてだけではなく、10歳の好奇心旺盛な男の子の視点から描いたこの作品。国内のみならず、様々な国の映画祭で受賞もうなずける作品でした。
尚、こちらの作品の続編となる「京太のおつかい」という作品が完成しており、今年2月に開催されたゆうばり国際ファンタスティック映画祭でお披露目されたとのことです。今後の上映情報などはFacebookページでご確認ください。

また、第五回観客賞作品「溺れるボレロ」は、自殺をするべく海にたどり着いたバレリーナのとよ子と、14歳まで人魚だったと語る小池、そんな2人(と、もう1人?)による不思議な作品。人魚と魚人の関係そしてバレエの世界、それぞれが複雑な背景をもちつつ、そんなことを全部吹き飛ばしてしまうような美しい海の景色と、とよ子のしなやかに舞う姿に魅了されました。

第二部の上映終了後は「溺れるボレロ」の奥田監督、とよ子役の富岡英里子さんと小池役の福田英和さん3名による舞台挨拶が行われました。

第五回観客賞作品「溺れるボレロ」とよ子役・富岡英里子さん 『リハーサルの時点では海も静かで晴れていたのですが、撮影が始まると台風が近づいてきて、水しぶきを浴びながら撮影した作品です』
第五回観客賞作品「溺れるボレロ」とよ子役・富岡英里子さん
『リハーサルの時点では海も静かで晴れていたのですが、撮影が始まると台風の接近に伴い、思いっきり水しぶきを浴びながら撮影した作品です』
第五回観客賞作品「溺れるボレロ」小池役・福田英和さん 『最後ボクが大声で叫ぶシーンがあるのですが、台風で海が荒れるなか目の前にカメラマンと、そのカメラマンを支える監督がいて、、、でも、その甲斐あって綺麗な映像を収めることができました』
第五回観客賞作品「溺れるボレロ」小池役・福田英和さん
『最後ボクが大声で叫ぶシーンがあるのですが、台風で海が荒れるなか目の前にカメラマンと、そのカメラマンを支える監督がいて、、、でも、その甲斐あって綺麗で不思議な映像を収めることができました』
第五回観客賞作品「溺れるボレロ」奥田裕介 監督 『撮影当日は降水確率が100%という状況の中、撮影しました、、、』
第五回観客賞作品「溺れるボレロ」奥田裕介 監督
『撮影当日は降水確率が100%という映画の撮影では考えられない状況の中、撮影しました、、、』

今後の予定として奥田裕介監督は、7月19日から横浜のシネマ ジャック&ベティで開催される『横濱キネマ・カーニバル』にて、「溺れるボレロ」(7/22)と横浜を舞台としたワークショップ作品「あの一瞬とそれ以外全部」(7/20,23,26,31)を上映。
また、富岡英里子さんは自身のプロデュース公演として、10月1日~5日まで中野RAFTにて「絶望のち」を開催。同一のテーマを掲げ「写真」×「演劇」×「映画」それぞれ作品を1つのギャラリーで観る試みとのこと。尚、映画は「溺れるボレロ」、舞台の脚本・演出は奥田監督とのことです。
そして、福田英和さんは10月1日~5日まで下北沢にて舞台が行われるとのことです。富岡さんの公演と全く同じ日程ですね、、、。

最後に関連告知として、7月19日から新宿K’s cinemaにて『竜宮、暁のきみ』、8月2日から同じく新宿K’s cinemaにて『リュウグウノツカイ』の2作品が紹介され、第五回 下北沢映画祭 グランプリ上映会は終了しました。

10月11日から開催される第六回下北沢映画祭ですが、当日のプログラム運営に協力頂ける【舞台ディレクター】、【音響】、【照明】を担当できるボランティアスタッフ、及び通年でご協力頂ける【広報】スタッフを募集しています。詳細は、下北沢映画祭 Facebookページでご確認ください。

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