インタビュー『Kay』『終点は海』

2022年4月9日から下北沢トリウッドにて公開される小編映画『Kay』『終点は海』。しもブロでも作品情報についてはお伝えしましたが(国際映画祭で30を超えるアワードを受賞、小編映画『Kay』『終点は海』下北沢トリウッドにて2022年4月9日公開)、今回はインタビューをお送りします。

『Kay』で娘のケイ役を演じた七瀬可梨さんと友人のユウ役を演じた伊藤歌歩さん、『終点は海』で息子のレン役を演じた清水尚弥さん、監督の鯨岡弘識さん、エグゼクティブ・プロデューサーの中嶋雷太さんに、撮影のエピソードや下北沢についてお話を伺いました。

写真左から伊藤歌歩さん、清水尚弥さん、七瀬可梨さん、鯨岡弘識さん、中嶋雷太さん
インタビューは3月に行われた先行上映会の後に行われました
写真左から伊藤歌歩さん、清水尚弥さん、七瀬可梨さん、鯨岡弘識さん、中嶋雷太さん
インタビューは3月に行われた先行上映会の後に行われました

---まずは役者の皆さんにお伺いします、『Kay』『終点は海』をそれぞれ演じた中で、最も難しかった点についてお聞かせください

七瀬: 父親との会話のシーンですね。父と会う嬉しさもあるけど、父のことを許しておらず突き放したい気持ちを抱えている設定だったので。ただ、父が投げかけてくる「おまえ生きづらくないか」といった言葉は、父と娘という立場の違いがあってもお互い同じ人間なんだと、ハッとさせられました

『Kay』

清水: 物語の中で初めて演じる設定だったので、どこまでそのことを表現してよいのか悩みました。そもそも、過去の母親との関係性があった上で、物語でお互いの関係が発展する内容だったので、作品の中での自分の役割について監督の鯨岡さんとディスカッションしながら演じました

『終点は海』

伊藤: 作品の中で私が登場するシーンは他のシーンとは雰囲気が異なっていて、私の役であるユウが作品の中で存在する意味について全体を通した上でしっかりと考えました。オーディションの時に本を一冊渡されたのに、実際には本とは全く関係なくある設定でフリートークをしてみてといった感じだったこともあって、監督はどちらかというと作り込んだものではなく、自然な雰囲気のシーンを作りたいと感じた上で演じました

『Kay』

---続いてエグゼクティブプロデューサーの中嶋さんにお伺いします。コロナ禍で作品を公開する上で、大変だった点についてお聞かせください

中嶋: 今となっては大変と言うより「映画って面白いなぁ」と思っていますが、配給という責任を負った立場として2019年12月に試写会を開催し、20年の春には劇場公開だと思っていたらコロナ禍に突入してしまいました。作品としての歴史年表的に考えれば2年後に公開しましたということですが、関わっていただいた皆さんのおかげでとても強度のある作品になっていて、見ていただくお客さんもコロナを経験し、さらにはウクライナのような問題まで起きている。2年前に完成した作品をこのタイミングで公開することは苦労と言えば苦労になりますが、それは意味がある事であると感じました。

もう一つ、予定どおり劇場公開できなかったので、海外の映画祭に応募しました。結果的にイタリア・インド・ニューヨークなどあちらこちらの映画祭で長編作を相手に受賞することができ、大変な時期にアワードをやっている彼らに評価してもらえたことが、心の下支えになりました。苦労話と言うよりはステキな映画であることをこの2年間をかけて提示することができたのだ、と感じています。

中嶋雷太エグゼクティブ・プロデューサー
中嶋雷太エグゼクティブ・プロデューサー

---鯨岡監督にお伺いします、『Kay』はコロナ前で『終点は海』はコロナ禍での撮影となりましたが、大変だった点についてお聞かせください

鯨岡: コロナ禍での作品作りは商業ベースの物ももちろん大変で、主に撮影の際に密にならないためにどうするかといった点についてですね。そのことを僕らとしては「きっかけ」として捉えたくて、今回で言えば『終点は海』は2人芝居でコロナ的にはセーフティーという点もありますが、そのことを自分の中で制約として見つめ直した上で作ることを意識しました。『Kay』の時に信頼できるスタッフがいた事もあり、少人数で『終点は海』を撮影できたことは、大変でありつつも挑戦するきっかけになったと捉えています

---両作品とも23分ですが、これは最初から決まっていたのでしょうか

鯨岡: 決めていたわけではなく、撮影し編集したら偶然どちらの作品も23分になりました。台本の長さも全く違っていて、『終点は海』は後半の洞口さんはセリフがありませんので。実際に編集してみないと分からなかったのですが、偶然23分で揃いました

鯨岡弘識監督
鯨岡弘識監督

---再び役者の皆さんにお伺いします、作品の見どころを教えてください

七瀬: 生きているだけで財産だな、と。生きていてツラいことがあったとしても、そのことでさえ価値があることを、作品を通してお伝えできればと考えています

清水: 『終点は海』に関しては、洞口依子さんですね。今日の上映会で『終点は海』を観ながら笑っていたのは僕だけだと思いますが、洞口さんのお芝居が素敵すぎて、凄すぎてもはや笑えてしまう。演技の全てに意味があり、そこにいることの成立の仕方が尋常ではなくて、本当に洞口さんのお芝居を観て欲しいです。あと、映像制作に対するこだわりという点において、画の質感や光の加減、画角もそうですが、色々なこだわりがある作品になっています。2作品とも何度でも観たくなる作品なので、ぜひディティールにも注目してください

『終点は海』
『終点は海』

伊藤: 小沢さん(ケイの父親役)がスルメをポケットに入れるシーンがあって、そのシーンも含めてちゃんと観ていると気になることが結構あるので、繰り返し観て欲しい作品です。あと、猫をかわいがるシーンで小沢さんが急に”生っぽい”芝居に感じられかわいらしい一面を見ることができたりして、あのシーンの雰囲気も好きですね

---『Kay』のポスターにも書かれていますが、ずばり今、生きづらさは感じていますか?

七瀬: なんか、、、ありますね。ありのままの自分を出していいのか、周りが普通だから自分が変なのかと思ってしまったり。もっと、自分が自由に出しやすい世の中になればいいな

清水: 生きづらさはありますね。でも、先ほども七瀬さんが話していましたが、迷っているくらいなら生きていたほうがいい。迷えている時点では生きている、まだ生きていた方がいい。もちろん、生きづらさはあるけど、まずはやりきりたいですね

伊藤: 私の性格でもありますが色々なコトを受け取りやすくて、SNSで目にする嬉しいことや悲しいことを自分自身で受け止めてしまうことが多く、SNSを見ているとツラくなります。今の社会は情報が多すぎますよね

『Kay』

---皆さんやはり生きづらさはありますが、お話を聞いていてそれが生きているということであると感じています。それでは話はガラッと変わりまして、作品が公開されるのが下北沢トリウッドとなりますが、皆さん下北沢について思い入れはありますか?

七瀬: つい最近1・2年ぶりに下北沢に行きまして、街が凄く変わっていて思わず住んでみたくなったので物件を探したのですが、、、家賃が高くて諦めました。古着屋さんやご飯屋さんが増えていて、若者の街になってますね

清水: 元から若者の街だよ(笑)。僕は昨年下北沢で舞台をやっていて毎日通っていましたが、なにもかも揃っている街なので、この街に住めば全てが完結すると思っていました。街並みも新しくなり、心なしか治安もよくなっている気がして、綺麗になって素敵な街だなと。劇場や今回上映されるトリウッドさんもあり、文化の街でもありますからね。休日に行くところに困ったら下北沢に行けば、一日が約束される街じゃないかなと思います

伊藤: 私は古着が大好きで、古着屋さんが多くある下北沢にはよく行きます。私も去年の夏に初めて下北沢で舞台に出演して感じましたが、お店の方と話していても人と人との心の距離が近い雰囲気がありますよね。友達が映画の宣伝を看板を手に持ち街中でしていて、SNSに頼らずに自分自身で宣伝したり、そういうことができる街ですね。演劇については、本多劇場という聖地もありますからね

鯨岡: 下北沢についてなら、永遠に語れます(笑)。高校時代からずっと通っている街で、学生時代に初めて上映された映画はトリウッドでしたし、バンドで下北沢ERAでライブをやっていたので。先日まで笹塚に住んでいて、歩きや自転車で来れる距離ですからね。実は『Kay』の打ち合わせも全て下北沢でした。オーディションが終わった後も下北沢のお店で中嶋さんと内藤プロデューサーと3人で集まり、深夜まで話し合ってましたね

中嶋: そうそう喧々諤々で、茶沢通り沿いの某お店で。全然譲らないんですよ、この人(鯨岡さん)

鯨岡: オーディションが皆さん素晴らしくて、どうしようと話し合いましたね

中嶋: てっぺん(夜0時)超えちゃってそれでも譲らない、さらには内藤さんも譲らない。コロナ前の茶沢通り沿いの居酒屋で数時間、ある意味下北沢ならではの世界でしたね。ちなみに、私自身もほぼ毎日下北沢に行ってます。私もよく行くこはぜ珈琲店とか、役者さんもよく来られるお店もありますね

『終点は海』

---皆さん、下北沢と様々な形で関わりがあったのですね。清水さんの「一日が約束される街」というお言葉、下北沢に関わる人間として本当に嬉しいです。そして、『Kay』の打ち合わせも下北沢で行われていたとは、考えてもいませんでした。それでは最後になりますが、映画を観られる皆さんにメッセージをお願いします

清水: 今回の作品は題材が題材だったりするので、エンタメ作品の面白さはもちろん素晴らしいですが、そういう作品からは得られないモノが込められています。何かを否定して何かを肯定するといったことではなく、何かに寄り添っている映画なので、様々な想いを抱いている皆さんに観ていただきたいです

中嶋: ヒーローもダークヒーローもでない、『Kay』の父親もケイ自身もでこぼこな人生。『終点は海』についても、ダメだけどカッコいいといったことさえない。でこぼこでいいのではないかと思います。あと、孤独が悪いことやよくないこととして受け止められがちですが、孤独である事自体は悪いことではない。こんな時代だからこそ、伝わることがある作品です

鯨岡: 監督としてもこの2作品はとても好きな作品で、自分の役者さんに対する想いがしっかりと体現されていますので、そこを観ていただきたいです。あと、お子さんがいる世代の方の言葉や、逆に親に対する見方が変わったと言ってくれる世代の皆さんもいて、とにかく幅広い年代の皆さんに観ていただきたい作品です

伊藤: 今回改めて作品を観て感じたのは、撮影した2年前と今では全く状況が違っていて、『Kay』は家族の話ではありますが、コロナの状況も含めて生きづらさを感じている人はたくさんいると思います。このポスターのビジュアルや書かれている言葉が気になった皆さんに、ぜひ観ていただきたい作品です

七瀬: 作品の中でギターケースに入っていた紙に「生きろ!」というメッセージが書かれていて、私自身その言葉が最も心に刺さった部分であり、生きていれば絶対ににいいことがある、そんな希望のある映画だと思っています。ぜひ、観に来てください

---ありがとうございました。私もトリウッドのスクリーンで、改めて『Kay』と『終点は海』を観させていただきます

いよいよ、4月9日(土)に下北沢トリウッドで公開される『Kay』『終点は海』。公開初日となる4月9日には、12時上映回の終了後に七瀬可梨さん・伊藤歌歩さん・鯨岡弘識監督の舞台挨拶が、18時上映会の終了後には清水尚弥さん・鯨岡弘識監督の舞台挨拶が行われます。また、4月10日(日)の各回上映後には、鯨岡弘識監督のトークイベントが開催されます。

[上映スケジュール]
4/9(土) 10(日) 12:00/18:00
4/11(月) 14:00/17:20
4/13(水)~15(金) 14:30/17:50
4/16(土) 17(日) 12:00/18:00
4/18(月)~22(金) 15:10/19:00
4/23(土) 12:30/19:00
4/24(日) 29(金祝) 12:30/18:30
4/25(月)~28(木) 13:00/19:00
※平日火曜定休

[料金]
一般 1,200円
大学・専門・シニア 1,000円
高校生以下 900円

下北沢トリウッドは上映日前日の0時からネットでの予約が可能です。4月9日の座席予約は、4月8日0時からとなりますので、初日の舞台挨拶に参加されるの皆様はぜひチケット予約をお願いします。ご予約はトリウッド公式サイトの上映スケジュール及び作品紹介ページから行えます。ぜひ、トリウッドでご覧ください。

映画『Kay』『終点は海』
映画『Kay』『終点は海』

『Kay』(2020/日本/16:9/HD/23分)

出演: 七瀬可梨、小沢和義、片岡礼子、伊藤歌歩
監督: 鯨岡弘識
脚本: 中嶋雷太/鯨岡弘識
原作・原案: 中嶋雷太著「春は菜の花」
撮影: 平見優子
照明: 日比野博記
録音: 小牧将人
ヘアメイク: 菅原美和子
衣装: Ka na ta
プロデューサー: 内藤 諭
エグゼクティブ・プロデューサー: 中嶋雷太
製作: 中嶋雷太
配給: Raita Nakashima’s Cinema

『終点は海』(2021/日本/4:3/HD/23分)

出演: 洞口依子、清水尚弥
監督: 鯨岡弘識
脚本: 鯨岡弘識
撮影: 佐藤宏樹
照明: 日比野博記
録音: 小牧将人
ヘアメイク: 菅原美和子
宣伝プロデューサー: 石原弘之(株ポルトレ)
プロデューサー: 内藤 諭
アドバイジング・プロデューサー: 中嶋雷太
製作:内藤諭、鯨岡弘識
配給: Raita Nakashima’s Cinema

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