劇団フルタ丸 2016年 本公演ツアー 『ビッグマウス症候群』

下北沢を拠点とする劇団フルタ丸2016年の本公演が5月25日からはじまります。今回の本公演は東京公演と岐阜公演と2カ所で上演されます。それに先駆け、この公演にかける想いを主催のフルタジュンさんに伺いました

 

劇団フルタ丸2016年の本公演ツアー『ビッグマウス症候群』が、2016年5月25日(水)~29日(日)の5日間にわたり【下北沢「劇」小劇場】で上演されます。さらに、“本公演ツアー”という事もあり本公演としては初めてとなる岐阜公演が2016年6月10日(金)~12日(日)に岐阜県美濃市【美濃「道の駅」にわか茶屋 大多目的室】でも上演されます。

2016年に入り多くのイベントをこなし迎える本公演。下北沢と美濃、8日間11公演で行われる本公演ツアー、その見どころを2016年の活動を振り返りつつ劇団フルタ丸主宰のフルタジュンさんに伺いました。

ビッグマウス症候群

 

---前回のインタビューは1月でしたが(参照:劇団フルタ丸の2016年がはじまる)、あれ以降たくさんのイベントがありました。1月にプロデュースと作・演出を担当された『青春ゲットバック 2ndシーズン』、2月初旬のフルタ丸サロン『遠足前夜』と下旬の最強の二人芝居プロジェクト『虎の館』、3月はスタンダップコメディ―ライブ「おはようインコさん その2」、4月は下北沢コロッケフェスティバル×SFF×劇団フルタ丸『下北コロッケ』、そして5月1日毛呂山町で行われた最強の二人芝居プロジェクト『虎の館」虎』を経て、今回の本公演となります。私の目から見ても、とてもハードスケジュールだと思いますが、やはり大変でしたか?

フルタジュンさん(以下、フルタ): そうですね、考えられないくらい多いですね。ある程度は意図してこのスケジュールにしていたのですが、下北コロッケに関しては予定していないところに入ってきましたね。本来、下北コロッケの頃から本公演の準備に入っているはずでしたが、、、今は四苦八苦しています

劇団フルタ丸 主宰 フルタジュン
劇団フルタ丸 主宰 フルタジュン

---その『下北コロッケ』ですが、どうでしたか

フルタ: お話しを頂いてスケジュール的には厳しいと分かっていましたが、今回の会場となったお店と縁があり引き受けました。昨年のカレーフェスティバルと同じく2日間で8ステージで、ある意味鬼のような大変さでしたが、一度やって免疫があったことが大きかったですね。そして、お店の方が調理や片付けなどでバックアップしてくれた事もあり、カレーフェスティバルに比べれば楽になった印象はありましたね。楽しくやることができました

---続いて『虎の館』について、企画自体の発表からかなり長い期間温めていたものですが、あのタイミングで公演を行った理由についてお聞かせください

フルタ: 『虎の館』についてはとにかく温め続けていて、役者の2人と自分の中で成熟したタイミングで出そうと決めていました。しかし、演劇において成熟させるという行為はキリがない、そのことに途中で気づきました。どこかで線を引き公演をやると決めることで、時間的な成熟とは異なる完成に向かうためのチカラが働くであろうと。ゴールを設けたことで、ハッパがかけられたこともあり、2人ともいい状態で公演を行うことができたと思います。公演の時期については様々なスケジュールをみて現実的に決めましたが、年明け早いタイミングでまずやってしまおうと。

埼玉公演も2月の公演がある前提で組んでいましたが、いざ2月に終わって埼玉に備えようとしたら2ヶ月しか時間がない。その2ヶ月の中で作品がどう変化するのか読めない部分もありましたが、改めて稽古を始め会場に合わせた演出に直しました。セット自体は同じモノ持っていったのですが2人芝居なので機動力があり、まさに地方巡業に向かう感じでしたね。演劇だとどうしても人数やセット自体を運ぶことが大変なのですが、2人芝居なのでまさにバンドの機動力のような感じで行った公演でしたね

---そのような過密スケジュールを経て、今回の本公演となります。タイトルの『ビッグマウス症候群』について、タイトルにもなっている「ビッグマウス」がテーマの作品ですが、このテーマについてはいつ頃思いついたのでしょうか

フルタ: 実は「ビッグマウス」というキーワードは数年くらい前から作品にしたいと考えていました。今回思いついた訳ではなく、ずっとテーマとして頭の中にありました。そして、このタイミングでこのテーマについて作品を作りたいという想い、そして劇団としてフルタ丸として「ビックマウス」になるべきだという想いが込められています。

僕は最近になって「下北沢を代表する劇団である」ということを言い始めていますが、その辺りもひっくるめて「ビッグマウス」という作品と劇団フルタ丸をダブらせたい、そんな想いで今回の作品に挑んでいます

劇団フルタ丸 2016年 本公演ツアー 『ビッグマウス症候群』

---お芝居のテーマとしてだけでなく、劇団のテーマとして「ビッグマウス」に挑む、、、ものすごく大きなテーマですね。確かに「下北沢の劇団」である事は間違いないのですが、「下北沢を代表する劇団」となると、正直なところ言い切ってよいのか難しいところですね

フルタ: 地方公演は別ですが、本公演について下北沢以外の街で演劇をすることに何も感じない、魅力を感じなくなってきました。この街で演劇を企画して、この街で上演して、この街にお客さんを呼んで、この街を楽しんでもらって帰ってもらう。そこまでをひとくくりとしてお芝居を作りたい、そんな想いがそこにはあると言いたいのです

---そんな想いが込められていたのですね。フライヤーに書かれた内容から、猛烈に喜劇路線だと想像していました

フルタ: もちろんいつも通りコメディではありますが、作品の中に描きたい想いみたいなものは強くありますね

---本日のインタビューを「ヴィレッジヴァンガードダイナー」にしたのは、なんとなくこのお店には「ビッグマウス」な人がいそうだと。完全に私の思い込みでしかありませんが

フルタ: いや、「ビッグマウス」が好きな食べ物ですよハンバーガーは。だって、アメリカの象徴みたいな食べ物ですから(笑)

ヴィレッジヴァンガードダイナーのハンバーガーとフルタジュン

---2人して言いたい放題だ、、、いやいや、とてもステキなお店ですよ「ヴィレッジヴァンガードダイナー」さんは! さて、フルタさんにおける「ビッグマウス」とはどのような人だとお考えでしょうか

フルタ: エンターテナーだと思っています。「ビッグマウス」には色々な種類がありますが、ずっこけてもある意味笑いものになるし、成功したら成功したで崇める人がいたりする。まず何かを「言う」こと自体は、自分の逃げ道を無くしている部分もありますが、僕はエンターテナーなんだと思っています。自分の中で確信を持って世の中がよくなる方向に行くことを願っている「ビッグマウス」と、ただ単に自分の力を誇示したいだけの「ビッグマウス」。様々な種類があるので一概に言うことはできないですけどね

---それでは、このチラシにも書かれている、「ウソツキ」についてはいかがでしょうか

フルタ: 言ったことが全部滑り続ける、叶わないことが続いていると「ウソツキ」というレッテルが貼られてしまう。ちゃんとした努力を自分の中で見えてなく、大きなことを言う人、そのまま大人になってしまうと「ウソツキ」になってしまう。一方、自分で言ったことに対する努力が見えている人は「ウソツキ」ではないと思います。努力をした結果叶えられたら「ビッグマウス」としていいのかもしれない、それが見えている人はずっこけても「ウソツキ」ではない、社会的には「ウソツキ」というレッテルを貼られてしまうかもしれないけど

劇団フルタ丸 2016年 本公演ツアー 『ビッグマウス症候群』 フライヤー裏面
劇団フルタ丸 2016年 本公演ツアー 『ビッグマウス症候群』 フライヤー裏面

---公演のフライヤーにも書かれていますが、このお芝居の中では『ビッグマウス症候群。病気ですね』と扱われていますが、この点についてお聞かせください

フルタ: これはシナリオ的な部分ですが、そういった「ビッグマウス」であることが悪である、不道徳であるという世界になった話しなんですね。現実よりも、もっとモノが言えなくなった世界の話しの中で、病気として病院に通う「ビッグマウス」の人間がどのような事を思いながら、自分たちが生きる街で起きる様々なことと向き合っていくのか、そのことを表しています

---ああ、そういうことなのですね。ある意味、今のモノが言いにくい社会に対してなにかメッセージを送るような感じでしょうか

フルタ: そうですね、そういうことも今回の物語の中では言いたい。どのように伝わるのか、分からないですが

頼んだドリンクがあまりに大きすぎて、写真を撮るフルタさん
頼んだドリンクがあまりに大きすぎて、写真を撮るフルタさん

---続いて、岐阜公演の事をお聞かせください。まず、岐阜県美濃市はフルタさんの出身地ですが

フルタ: 人口2万人くらいの街ですね(21,560人、2016年04月30日現在)。高校・浪人時代まで住んでいた街ですね。その頃はこの街を出たくてしょうがなかったです

---改めて岐阜公演を美濃市で行う事について、その想いをお聞かせください

フルタ: 美濃で小劇団が演劇をやるということはまずありません。それこそ小学校の時に観た、全国を回っているような劇団がやったお芝居「ごんぎつね」が、自分にとって19年間で唯一の演劇でした。そして、その演劇で覚えていることは、キツネ役の人が体育館の端から端までバク転でずっと移動して凄かった、そのくらいなんです。それくらい、演劇と美濃市は遠い距離感のあるものだと思っていました。

地元の美濃市から東京に出て、演劇を学び、演劇をやって面白いと思いました。その面白いものを地元の人たちにも観てもらう機会を作りたい。現状では観る機会さえ無い状況なので、まずは観る機会を地元に作りたい。映画でも隣町のシネコンでしか観ることができないような街で、演劇の街・下北沢でしかやらないような演目を地元の美濃市でやることで、演劇を楽しんでもらいたいという想いが強いです。

そして、岐阜と東京、美濃市と下北沢を演劇で繋ごうとしているのは僕しかいないので、なんとかして下北沢のことも知ってもらいたい。下北沢では美濃のことを発信して、美濃では下北沢のことを発信して、お互いの街がお互いの街を気になる存在、まずはお互いの街の名前を知ってるという存在からつながりを作ることができればいいなと思っています

---確かに、美濃市の存在はフルタさんのお話で初めて知りました

フルタ: あまり知られていないのですが、美濃市は文化的には周りの市町村に比べて成熟している市で、「にわか」と呼ばれる漫才に近い伝統芸能があります。美濃市の町並みは「うだつの上がる町並み」と呼ばれているのですが、その町並みで町内ごとに「にわか」と呼ばれる社会風刺を入れた掛け合い漫才を町内ごとに作り、桜の咲く4月の美濃まつりの時期に発表し合うのです。僕は同じ美濃市の出身にも関わらず、にわかをやる町内に住んでいなかったためにそれにはノータッチだったのですが、なにかを演じて観るという文化自体がある土地ではあります

---とても興味深い話しですね

フルタ: もう一つ「美濃和紙」が有名で、その和紙を使った「美濃和紙あかりアート展」という、和紙を使って創作した中に電球を入れて街中に展示するというイベントが盛り上がっています。美濃市は文化に関しては間口が拡がっている、人に楽しんでもらうという素養はあるのだろうと考えています

---ちなみに、台本は同じだと思いますが、下北沢と美濃でセットは同じでしょうか

フルタ: 台本は同じですね。一方、セットについては下北沢に比べると簡略化したものとなりますが、美濃市の公演では和紙を使ったセットを作る予定です

---まさに美濃市出身だからこそできる事ですね。それでは、岐阜公演については特にどのような方に観て頂きたいでしょうか

フルタ: こんなことを書くと逆に来づらくなってしまうのかもしれませんが、美濃にいて何が地元で楽しいのか分からないような学生さん、地元に未来を期待できない学生さんに来てもらいたいですね。ストーリーにも関係してくるのですが、いずれ名古屋や大阪、そして東京に出て行こうと考えている学生さんにとって、価値があるものを観てもらえると考えています。なかなか若い皆さんにとって今回の会場はアクセスが難しいのですが、美濃市とあと関市ならギリギリ自転車で来れると思いますので、若い人たちが自分の意思で来てもらえると嬉しいですね

---学割もありますしね

フルタ: もちろん、全ての年代の方に観て頂ける作品ですので、地元の幅広い方に観て頂きたいです。

あと、僕の中での1つのシリーズの分け方をすると、今まで地元と東京を対比させる作品は2つ作っているのですが、その2作品である「匿名家族」と「フルカラーの夏」に続く、地元と東京シリーズ3部作の完結編という意味合いもあります。東京公演は東京公演で観て感じる事はあると思いますし、岐阜公演で観ることでも意味がある、そんな作品にしたいですね。ずっとこのような形で東京と岐阜で公演することは難しいと思いますが、今回は両方で観ることの価値のある作品になりそうです

---え、下北沢と美濃市の両方観る予定の方いらっしゃるのですか?

フルタ: いらっしゃいますね

---いるのですね、、、そんなこと言っておきながら、私も両方の公演を観ますが。そう言えば、どこに泊まればいいのだろう

フルタ: 泊まるところ近くにありますよ、『美濃 緑風荘』という観光旅館があります。美濃市に唯一ある観光旅館です

---ちなみに劇団フルタ丸の皆さんは、、、フルタ家に泊まるのでしょうか

フルタ: そうです。1回みんなが泊まってみて、僕の実家にみんながいるというのが面白かったんです。リビングにいたり、みんなが順番でお風呂入っていたり。最初はどこか宿をおさえようかという話になったのですが、それだと面白くないような気がして。みんなが僕の母親が作った朝ご飯を食べているとか、そういうことすらみんなで楽しむ、みんなで楽しみたいのです

---楽しむ、、、単純に公演を行うことだけでも相当チャレンジングなのに、「楽しむ」とはさすがに驚きました。それでは、最後に一言お願いします

フルタ: どちらかでももちろん楽しめますが、岐阜で観ると違った感覚で観られるかな、と

---(遠征を煽ってる、、、)ありがとうございました

巨大ドリンクに戦いを挑むフルタさん、、、ごめんなさい、でかすぎるドリンクを勝手に頼んでしまって
巨大ドリンクに戦いを挑むフルタさん、、、ごめんなさい、でかすぎるドリンクを勝手に頼んでしまって

「ビッグマウス」をテーマにし、この公演と劇団にかける想い。そして、現在過ごしている下北沢と、上京まで過ごした美濃。様々な想いが今回の本公演、いや、本公演ツアーに込められていることが伝わってきました。下北沢の初日まで、あと1週間あまり。今回も劇団フルタ丸は私たちの期待をよい意味で裏切るお芝居を見せてくれることでしょう。

チケットは公式サイトから絶賛予約受付中。そろそろ、埋まってしまう回が出てくると思いますので、予約はお早めにどうぞ。私ももちろん予約済みです! 下北沢も美濃も!! あ、『美濃 緑風荘』も予約しようっと。

ビッグマウス症候群

劇団フルタ丸 2016年 本公演ツアー
『ビッグマウス症候群』

作・演出:フルタジュン

<出演>
宮内勇輝
真帆
篠原友紀
工藤優太
清水洋介
フルタジュン

ビッグマウス症候群

久しぶりに聞かせてくれないか、君のビッグマウスを。

精神科医の元に、ある男がやってくる。
彼は子供の頃からウソツキとして有名だった。
できそうにもないことを堂々と宣言しては、いつも周りを混乱させた。
大人になると、職場の同僚達は彼のことをペテン師と呼ぶようになった。
医者は男と目を合わせるなり、すぐに診断結果を伝えた。

「ビッグマウス症候群。病気ですね。」

大口を叩く人間に病名が付いた世界で起きる、
これは生き様のオハナシ。

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【東京公演】
2016年5月25日(水)~29日(日)
25日(水)19時半
26日(木)19時半
27日(金)14時/19時半
28日(土)14時/18時
29日(日)14時/18時
※前売り日時指定・全席自由
※受付開始は開演の40分前・開場は開演の30分前
<チケット代金>
前売3,500円/当日3,800円
学生割引 2,500円(受付で学生証提示)
<チケット予約>
公式サイトから
<会場>
下北沢「劇」小劇場
〒155-0031 東京都世田谷区北沢2-6-6
Tel:03-3466-0020

【岐阜公演】
2016年6月10日(金)~12日(日)
10日(金)19時
11日(土)19時
12日(日)19時
※前売り日時指定・全席自由
※受付開始は開演の40分前・開場は開演の30分前
<チケット代金>
前売・当日 2,000円
学生割引 1,500円(受付で学生証提示)
<チケット予約>
公式サイトから
<市内プレイガイド>
美濃市文化会館 0575-35-0522
美濃「道の駅」にわか茶屋 0575-33-5022
<会場>
美濃「道の駅」にわか茶屋 大多目的室
〒501-3714 岐阜県美濃市曽代2007
Tel:0575-33-5022

<協力>
特定非営利活動法人四つ葉のコウゾ

<スタッフ>
照明・広報:satoko
音響:前田マサヒロ
音響プラン:水野裕
音楽:平野智子
舞台美術:泉真
写真:木村健太郎
撮影:株式会社アンダンテ
当日運営:安田有希子
協力:古田大地/濱路沙優里
制作:三村大作
企画・製作:劇団フルタ丸

<お問い合わせ>
●電話 080-4898-2002(フルタ丸)
●メール info@furutamaru.com
電話もしくはメールでのチケット予約も承っております。
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