『ビニールの城』、“ビニール”そして“城”とは最も組み合わせが想像しにくい物体同士だ。ビニールは透明で向こう側を見ることができそして柔らかい、一方で一般的な城のイメージは中を覗くことはままならず、大きく頑丈で苛烈な攻撃に耐える事ができる。
正直、タイトルだけでは何もイメージできていなかった。しかし、このお芝居を観た後、『ビニールの城』という言葉は自分に深く刻み込まれることとなる。
お芝居として自分にとっては非常に難解な作品だった。2日前、この場所で柄本明さんが話してくれたコメントを思い出した、
「わからないです、何をやっているのか全然わからない」
唐作品の魅力を問われ、柄本さんはこんなコメントをした。台詞を聞く限りは目の前で起きていることがわかるような気がする。でも、それをしっかりと組み立てようとすると形にならない。そんなことをしてる間にも、どんどんシーンは展開してゆく。
組み立てることを諦め、ただただ、目や耳に入ってくるモノを受け止めることにした。不思議だ、さっぱりわからないと思っていたことが、直接心に届き始める。考えるより感じる、久々にそんなお芝居に出会った。
ラストシーン。この3日間、この場所、このお芝居、全てが揃っていないと見ることができない、とんでもない光景を目の当たりにする。たったの3日間、それも3桁台の人しか観ることができないとは、、、そのうちの1人になれたことを本当にうれしく思った。
このお芝居が下北沢に与える影響は極めて大きい。小田急電鉄がこの場所に「下北線路街空き地」という、文字通り空き地を作らなければ決して実現しなかった。そして、このお芝居を上演する決断をしたからこそ、今ここでこの感動を味わうことができた。本多劇場でもザ・スズナリでも、駅前劇場でも、「劇」小劇場でも、、、下北沢にあるどんな劇場でも実現することができない演出が、2019年10月の紅テントだからこそ見せることができた。 43年前、本多劇場が入る下北沢ハイタウンができる前の空き地に紅テントが建った時も同じような感覚だったに違いない。令和の下北沢に新たな伝説が生まれた瞬間だ。
「不思議な言葉が出てきて、それがいきなりこちらに突き刺さって思わず涙が出てしまう、感動してしまう、なにかわからない場所に連れていかれる。それが醍醐味ですかね」
柄本さんのコメントの続きを思い出す、まさにその通りだった。しかし、それはその言葉を聞いたときの自分のイメージを遙かに凌駕していた。本当に本当に、本当に素晴らしいお芝居に出会うことができました。改めて、唐十郎さんと唐組、そして小田急電鉄に感謝したい、ありがとう。
唐組・第64回公演【唐十郎‘85名作選[第二弾]】『ビニールの城』は、10月20日(日)まで。当日券については午後2時の受付開始以降に現地でご確認ください。下北沢を愛するあなたに、ぜひ見ていただきたい作品です。
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唐組・第64回公演
【唐十郎‘85名作選[第二弾]】
『ビニールの城』
助けて。ビニールの中で苦しいあたしを。あたしはいつもそうです。
あなたとお会いしてからも、二人の間にはビニールがあって、なにか言えない、思いのたけをあなたに告げられないと、いつも気が急いておりました。
―朝ちゃん、ビニールを張った以上、ここはビニールの城です―
作=唐十郎
演出=久保井研+唐十郎
[役者陣] 久保井研、稲荷卓央、藤井由紀、岡田悟一、福本雄樹、福原由加里、加藤野奈、栗田千亜希、升田愛、全原徳和、戸辺俊介、川崎勇人、藤森宗、影山翔一、竹岡直紀
[スタッフ]
絵=合田佐和子
作曲=北村早樹子、安保由夫
宣伝美術=及部克人、海野温子
舞台美術=紅美術団子
照明=福本雄樹
衣装=安楽きわ
音響=岡田悟一
舞台監督=全原徳和
人形美術=足利浩平
[公演日程]
●下北沢特設紅テント
本多劇場グループ テント企画
下北線路街 空き地(下北沢交番横小田急線跡地)
2019年10月18日(金)19日(土)20日(日)
[開演時間]
毎夕7時(6時30分開場)
[入場料]
前売券=3,500円
当日券=3,600円
学生券=3,000円(劇団でのみ販売)当日受付で学生証をご提示下さい。
※入場整理券(前売券と引き換え)及び当日券は、午後2時より受付にて発行致します。※ 独立した幼児以外の幼児は入場をご遠慮下さい。
[唐組事務所]
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