映画『劇場』この街で時を刻む不器用で美しい恋物語

お笑い芸人で芥川賞作家・又吉直樹の第二作目である小説『劇場』、主演を山﨑賢人そしてヒロインを松岡茉優が演じ、監督・行定勲 にて遂に実写映画化、4月17日(金)に公開される。

 中学からの友人と立ち上げた劇団「おろか」で脚本家兼演出家を担う永田(山﨑)。しかし、前衛的な作風は上演ごとに酷評され、客足も伸びず、劇団員も永田を見放してしまう。解散状態の劇団という現実と、演劇に対する理想のはざまで悩む永田は、言いようのない孤独を感じていた。

 そんなある日、永田は街で、自分と同じスニーカーを履いている沙希(松岡)を見かけ声をかける。自分でも驚くほどの積極性で初めて見知らぬ人に声をかける永田。突然の出来事に沙希は戸惑うが、様子がおかしい永田が放っておけなく一緒に喫茶店に入る。女優になる夢を抱き上京し、服飾の学校に通っている学生・沙希と永田の恋はこうして始まった。

 お金のない永田は沙希の部屋に転がり込み、ふたりは一緒に住み始める。沙希は自分の夢を重ねるように永田を応援し続け、永田もまた自分を理解し支えてくれる彼女を大切に思いつつも、理想と現実と間を埋めるようにますます演劇に没頭していき―。

夢を叶えることが、君を幸せにすることだと思ってた―

映画『劇場』

演劇の聖地・下北沢には、多くの才能が全国から集まってくる。自らの夢を実現するべく、この街でもがき苦しむ演劇人は数え切れない。そんな彼らを支える人たちの存在も忘れてはならない、それが恋人であればなおさらだ。

クリエイティブの世界で、真の意味での正解を見つけることは非常に困難だ。演劇ならば、集客数や客観的な評価など様々な指標は存在している。でも、それは自分自身との闘いといった側面も持っている。自分の中でも見つけ出すことができない正解を、他人にはもちろんだが、支えてくれている人に対して説明することはとても困難だ。必要とされることは理解ではなくただ寄り添うこと、そこにはある種の美しさを感じる。なにもかもを演劇にかける人間と、それをただただストイックに支え続ける人による恋物語、それが映画『劇場』だ。

映画『劇場』

この作品は多くのシーンが下北沢で撮影されており、まず感じたのはその映像の美しさだ。下北沢という街は様々な場を持っており、美しい景色もたくさん存在している。その一方、この街で生きている人たちは時にかっこ悪く情けない姿を見せるが、そんな人たちを包み込んだ上で映し出されるこの街、その情景はとにかく美しいのだ。

特に予告編でも使われている、桜が満開の北沢川緑道のシーン、20年近く見続け知り尽くしていたはずの場所の全く知らない姿を見せつけられてしまった。自分が知っているはずの下北沢が、ここまで美しく映し出されている、まさに行定勲監督のなせる技だろう。

そして、永田を演じた山﨑賢人と恋人役の沙希を演じた松岡茉優、この二人の好演にも触れておかねばならない。

永田は本当に下北沢に存在していておかしくないキャラクターであり(とはいえなかなか希有な存在だが)、自らに対する揺るぎない自信を持ちつつも、理想と現実のギャップに翻弄され、そして時折見せるあまりに純粋な姿が印象的だ。そんな人物を山﨑は見事に演じ、観る者は彼の存在そのものに惹きつけられる。

映画『劇場』
映画『劇場』

一方で、沙希の存在は言葉では言い表すことができないくらいピュアだ。キャラクターとしてのピュアさに寄るところもあるが、それを松岡が演じることによって無限大の輝きを放っている。様々な作品で輝く松岡を見てきたが、間違いなくこの作品における沙希は最も光り輝いていると断言できる。

映画『劇場』

又吉が創り出した世界に、山﨑と松岡による名演、そして数々の名作を生み出した行定勲が監督を務める、このコンビネーションだったからこそ生まれた作品だ。そして忘れてはいけない、音楽を担当した曽我部恵一の存在もこの作品の情景を創り出す要素として欠くことはできない。物語の舞台が下北沢だけに。

映画『劇場』は、4月17日(金)全国ロードショー。この街“下北沢”で時を刻む不器用で美しい恋物語、ぜひご覧ください。

『劇場』

『劇場』

出演:山﨑賢人 松岡茉優
寛 一 郎  伊藤沙莉  上川周作 大友 律  / 井口 理(King Gnu)  三浦誠己  浅香航大
原作:「劇場」又吉直樹 著(新潮文庫)  監督:行定勲  脚本:蓬莱竜太  音楽:曽我部恵一 
配給:松竹 アニプレックス 公式サイト:https://gekijyo-movie.com
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コピーライト:©2020「劇場」製作委員会