「シモキタ、すっかり変わったね!」
最近の下北沢を語るうえで枕詞のように言われるこの言葉。たしかに駅周辺の再開発、小田急線の地下化など大きな変化を遂げたのは一目瞭然ですよね。しかし、それだけで下北沢は変わったと言ってしまっていいのでしょうか。今回は30代の筆者が学生時代飲んだくれていた2010年代から現在2022年までの下北沢の変化について個人的視点も交えながら考えてみました。
新旧両方の魅力がひしめく非日常の街へ
久しぶりに下北沢を訪れてまず驚くのが駅前の視界の広さ。筆者が学生だった2010年前後は駅の2階に改札があり、南口と北口に分かれていました。階段を降りるとすぐに商店街や市場があるこぢんまりとした雑多な駅、それが下北沢だったのです。
それが今や駅の2階はシンプルで洗練された「シモキタエキウエ」に。小田急線の跡地にできた「下北線路街」に続く駅前広場は開放的で、家族連れも多く見られるようになりました。昔はバンドマンや役者の街で奇抜なファションの方ばかりだった印象。もちろん今でもそのイメージは残っていますが、新たな施設ができたことによりより幅広い層が集う街になりました。
しかし「下北線路街」から一本道を変えて下北沢南口商店街や茶沢通り、下北沢一番街商店街に入ってしまえば、懐かしさは健在。中華料理店「珉亭」や「ヴィレッジヴァンガード」、古着屋「CHICAGO」など、下北沢といえばここ! といえるお店と、こぢんまりとした街の雰囲気は残っていました。お店の入れ替えはあるにせよ、個性豊かな古着屋や飲み屋は変わらず多く、全体が変わったわけではないんだと少し安心。
井の頭線高架下にできた「ミカン下北」を物珍しく眺めながら歩いた先には、学生時代に通ったライブハウス「下北沢CLUB Que」があったり、西口は変わらないなぁとほっこりしたのもつかの間、線路を超えるとなんだかおしゃれな雰囲気に……行き着く先では「BONUS TRACK」や温泉旅館「由縁別邸 代田」というまったく新しいスポットに出くわしたり。地図が苦手な筆者は通い慣れた通学路に、突然異次元空間が現れる漫画の世界のような場所になったなぁと感じました。
ぶらり歩けばお気に入りのお店に出会える街
そんな変わった場所と変わらない場所が混在する今の下北沢、あえて目的地を決めずに散歩するのはいかがでしょうか。というのも、小学生の頃から下北沢に通っているという友人が「昔はGoogle mapなんて使ってなかったし、ごちゃごちゃした道を自分の足で探検するのが楽しかった」と話していたんです。現在は閉店してしまいましたが「NORTH SIDE CAFÉ」や「モワカフェ」なんかも、歩いていてなんかいいな〜と足を踏み入れたことがきっかけで通うようになったそう。
言われてみれば最近ではSNSなどで目的のお店を決めて出かけることや、Google mapで近くのお店を検索する機会が多くなっている気がします。あえて地図を使わずにぶらぶらすることで、新旧さまざまなお店に出会えるはず。どの通りを歩いても魅力的なお店に出会えるのも、下北沢の魅力のひとつですね。
独特な雰囲気を残しながら進化し続ける下北沢
「下北線路街」の誕生によって確実に進化を遂げた下北沢。しかし、不思議と疎外感を感じることはありません。それは昔ながらのお店が残っていることはもちろん、新しいスポットも下北沢らしく、自由で唯一無二の存在であることを大切にしているからだと思います。
そういえば新しくできた施設もほとんどが低層階ばかり。再開発の際、反対派の方の意見も取り入れながらデザインを行なったそうで、決して大きくはない個性的で人情味溢れるお店が多いのはそのおかげかもしれません。「ルイ・ヴィトンができたらもう下北には行かない!」と冗談混じりに言った友人の言葉は極端ですが核心をついているように感じました。
まるで暮らしの一部のように自然にユニークなお店が並び、新しいのに懐かしい。その違和感をもって異世界に連れて行ってくれるのが現在の下北沢の魅力ではないでしょうか。
[参考]
東京新聞web 「反対派の声生かし「シモキタ」感を表現 下北沢周辺で「線路街」が完成」
https://www.tokyo-np.co.jp/article/179322