シリコン第二回公演「アイニク」 シリコン第二回公演「アイニク」

[レビュー]シリコン第二回公演「アイニク」松尾英太郎ワールドによって見ることができない世界を観せてくれる

2024年1月16日よりOFF・OFFシアターで上演されている、シリコン第二回公演「アイニク」を観劇しました。

《ストーリー》

認知症専門の特別養護老人ホームに一人の女性が入居する。 見当識障害の彼女が入居者の男性と目を合わせると、次第に何かを思い出したように笑いだす。
二人は過去に6畳ワンルームのアパートで同棲していたカップルだった。 曖昧な記憶の断片の旅が始まる。

“見当識障害”とは認知症の症状の1つで、時間や場所、人の認識に障害が生じるもの。今がいつなのか、ここがどこなのか、家族の顔を見ても分からないなどの症状が現れます。「アイニク」告知記にも書きましたが、私自身、様々なタイプの認知症の方と接したことがあります。私たちからすると行動や言動を理解することは難しいわけですが、認知症とはそういうものなのだから致し方ない、そう解釈してきました。その人がどんな世界を見ているのか、知ることはできないと諦めていました。

冒頭からちょっと不思議な演出で始まるこの作品は、人が人を想うことと、人の記憶の不思議さをお芝居を通して提示してくれます。そして、私たちが見ることができない、認知症の皆さんが見ているかもしれない世界を観させてくれます。もちろん、本当にその人たちが見ている世界はわかりません。でも、こんな世界を見ているのかもしれない、そしてそれはとても幸せなことなのかもしれない。そんなことを考えている時点で、完全に松尾英太郎ワールドに引き込まれたことを実感しています。素晴らしい作品でした、素敵な95分間でした。

5人の役者さんはそれぞれ素晴らしいお芝居で惹きつけられましたが、ここまでハッキリとそれぞれがオンとオフを見ることができるのは凄いことだと感じました。個人的には古川さんが凄かったなぁ、あの狂気の表現は恐ろしい、もはや思考が停止して笑うしかない状況でした。設定がツボすぎる。

シリコン第二回公演「アイニク」は、1月21日(日)までOFF・OFFシアターにて上演。平日の昼公演でもほぼ満席でしたので、チケットのご予約はお早めにどうぞ。あなたにもあの世界を実感してほしい、タイトルは完全に、見事に回収されます。

シリコン第二回公演「アイニク」
シリコン第二回公演「アイニク」
シリコン第二回公演「アイニク」
シリコン第二回公演「アイニク」

シリコン第二回公演「アイニク」

期間: 2024年1月16日(火)~1月21日(日)
会場: 下北沢OFF·OFFシアター(北沢2-11-8 TAROビル3F)
出演: 幸田尚子、山中雄輔、篠原友紀(劇団フルタ丸)、古川ヒロシ、松尾英太郎
作・演出:松尾英太郎
舞台監督:星真一郎
照明:木村奏太(木村屋)
音響:内野智子
演出部:磯田浩一
制作:上村幸穂
協力:アットムービー、アレ、劇団スパイスガーデン、劇団フルタ丸
公演スケジュール:
2024年
1月16日(火)☆19:30
1月17日(水)☆14:00/☆19:30
1月18日(木)◆19:30
1月19日(金)14:00
1月20日(土)14:00/18:00
1月21日(日)13:00/17:00
※受付開始は開演の45分前 開場は開演の30分前
※ ☆:前半割 / ◆:終演後アフタートークあり
料金: 前売り3900円 当日4000円 ☆前半割3700円 (日時指定・税込/全席自由)
チケット予約: カルテットオンライン