『カトキット』との出会いは2015年3月16日、京都にあるライブハウス【nano】だった。事前情報一切なしで観たカトキットの音楽とパフォーマンスはとても印象的で、その名前は深く刻み込まれた。
対バン、 カトキットというバンドが最も刺さった。ライブをわかってるバンドだ。あと、モルグモルマルモってバンドがホイチョイなんとかとか言ってたけど、ホイチョイ・プロダクションズとは無関係だろうなぁ。あ、このバンドもライブをわかってる、楽しんでる。だから、俺らも楽しかったよ
— 下北さん(廣田西五) (@ymkx) 2015年3月16日
その後、しばらくは接点が無かったが、5月に入りカトキットは1st mini album「雨ニモマケル手帳」を6月17日にリリースする事を発表。それに先駆けタイトル曲の「雨ニモマケル」のMVが公開される。
このMVの衝撃は非常に強く、いても立ってもいられず1st mini album「雨ニモマケル手帳」をフライングゲット。聞き込めば聞き込むほどカトキットの魅力に引き込まれてしまう。曲は猛烈にエレクトロでポップなのに、その音に乗る詞は人の内面をあまりにリアルに映し出している。
最初の印象は「ひねくれてる音楽」そんな印象を受けたけど、詩を読めば読むほどバカがつくくらい正直に想いを吐き出している事に気づく。いわゆる恋愛ソング的な胸の内に秘めている感情とかそんなものではなく、一人の人間としての「レゾンデートル=存在理由」を突き詰めているような印象を受ける。曲中は自分自身の感情と他人の想いが複雑に交錯し、くじけたり歩む事を諦めてしまいそうなのに、曲を聞き終わると前向きな気分になっている。何があっても諦めない、そんな想いが深く込められた曲ばかりなのだ。
2回目のライブは2015年7月2日の赤坂BLITZ、続いて7月18日ラ・チッタデラ川崎のインストアライブ、8月5日渋谷eggman 、9月19日下北沢LIVEHOLIC、そして9月25日に北堀江club Vijonで1st mini album「雨ニモマケル手帳」リリースツアーファイナルを迎える。6回のライブで分かった事は、カトキットはとんでもないライブバンドである事。音源はパッケージとして決められた枠の中に収まっているのに対し、ライブではその押さえ込まれていた全てが解き放たれる。完全にこのバンドの虜になってしまったのだ。
その後も、11月4日LIVEHOLIC、12月11日渋谷CLUB CRAWL、14日名古屋RAD、15日豊橋CLUB KNOTとライブをチェックし、年が明けた2016年1月23日京都DEWEYで初となるワンマンライブを観る。このワンマンライブは人生の中で最も衝撃を受けたライブとなった。
そして2月13日、カトキットは下北沢にいた。BASEMENT BARで開催される【Beat Happening!下北沢CIRCUIT PANIC!PreParty!】に出演する。下北沢でカトキットの話しを聞けるチャンスは多くない。インタビューの申し出に彼らは快諾。カトキットの歴史や、これからの展望について、メンバー3人の話を伺う事ができた。そのインタビューの模様をお送りします。
※写真は一部を除き2016.2.13 BASEMENT BARで開催されたカトキット ライブより
---まずは、カトキットのメンバー構成及びどのような音楽をされているのか、お聞かせください
コバヤシヒロユキさん(以下、コバヤンさん): Vo.Syn.Gt. あっけ、Ba.Cho.ジャパニーズ 田中、Dr. コバヤシヒロユキの3人でやっています、、、どのような音楽ですか、、、あ、あっけ、頼む!
あっけさん: え、どうかと思うで、それ
ジャパニーズ田中さん(以下、ジャパさん): ポップの中にズバッと突き刺さる歌詞を乗せ、基本的にはエレクトロポップで、シンセが入った上での生の声があり、ドラムとベース、基本に忠実っぽいポップをやりながら、歌詞で変化球を投げる、そんな音楽をやっていると自負しております
あっけさん: 「ジャパ」とか言えよー!
ジャパさん: む、難しいジャパーぁ
---カトキット結成の経緯から、これまでの活動について、お聞かせください
あっけさん: えっと、1991年1月9日に生まれて
ジャパさん: え、生誕からいく?
コバヤンさん: 1と9しかないんやな
ジャパさん: で、91才まで生きるんやな
コバヤンさん: ぼくらは昭和ですよね
ジャパさん: 昭和62年(1987年)の7月、、、もう、いいっちゅーねん!
あっけさん: 私とコバヤンが出会ったのが、高校の先輩後輩で私が高一の時の、
コバヤンさん: 高四です
---え、高四?
コバヤンさん: 僕ね、高校二年生を二回やるっていうレアなタイプなんです。修学旅行二回行ったタイプです(笑)
あっけさん: 強いよなぁ、修学旅行二回はほんま強いわ
ジャパさん: 相当なメンタル持ってないとできない
あっけさん: 親にあやまれ、ほんま
コバヤンさん: 沖縄に二回行きました、宮古島に、、、
---という事は、高校の先輩後輩という事ですね
コバヤンさん: 部活が一緒でした
あっけさん: 本来出会うはずがないはずなんですけどね。私の姉も同じ高校で、姉とコバヤンが同級生で軽音部で一緒にバンドをやっていて
ジャパさん: あ、そうなんか。俺、コバヤンが留年せえへんかったら、二人が会わなかったしある意味留年した事に感謝してたんやけど、お姉さんとつながりがあったんやったら出会っていたのかもね
コバヤンさん: や、一緒の部活入ってなかったらからまへんかったし
あっけさん: 姉の年代の卒業ライブ、コバヤンが叩いてるの観てたよね
コバヤンさん: そこで写真撮ってたよな、集合写真のシャッター切る役やってたな。すっげー悪目立ちする子いるなって思って。なんか中学生みたいな感じなのに、「はいっ、じゃーとりまーすっ!」とか、すっげーガッツあるなって
あっけさん:(笑)高校入ってすぐに軽音部に入って、最初は敬語だったんだけど、どんどん敬語なんて無くなって、「えー、コバヤン、パンク?」とか話してた
コバヤンさん: 1週間後には「しね!」とか口癖のように言われてたわ(笑)
あっけさん: 軽音部の中で大会に出場するときに一緒にバンドを組んだりして、コバヤンが卒業するタイミングでバンドやらへんって
コバヤンさん: 外バンやろうやって。あっけは明らかに歌が周りよりうまくて、先にとっとかへんかったら誰かに取られるって思って、卒業したときに「やろうや」って
あっけさん: 高二くらいからオリジナルを作り始めて、その時のバンドが『こっぺぱんバイオレンス』なんです
---『こっぺぱんバイオレンス』、、、なんとも言えないバンド名ですね
あっけさん: 二人でファミレスでバンド名を考えているときに、「バビブベボ」とか「パピプペポ」とかたくさん入っているバンドは、口に出して言いたくなるからって。それで、『バンプオブチキン』みたいな感じという話しの流れから、なぜか『こっぺぱんバイオレンス』って
コバヤンさん: 二人でクスクス笑いながら、「絶対ウケるよな、ウケるよな」って言ってました。なんというか、「バイオレンス」の色が濃すぎるよな
あっけさん: で、ライブとかもやってて、Gt.はモルグモルマルモの宇宙でした
コバヤンさん: 同級生で高校も同じ、10年前の数少ない友達のうちの一人ですね
---まさか、ここでモルグモルマルモの宇宙さんの名前が出てくるとは
あっけさん: Ba.は私の同級生の男のコで、その4人で大会に出たりしていたのですが、ベースの実力が低いとなって
コバヤンさん: めっちゃ、生々しい話しやな
あっけさん: 演奏力が低すぎたので他の人を探して、見つけたのが田中です
コバヤンさん: 高校卒業後に音楽の専門学校に入って、でも、ほとんど学校には行ってなくて
ジャパさん: 彼とは1年間かぶっているけど、出会ったのは年度末だったんですよね、卒業ライブみたいなところで
あっけさん: で、その後、2人がロックンロールバンドをやっていて、そのライブを観に行って
ジャパさん: 初めてあっけに会ったときは、「すごい変なコ」だなぁって
あっけさん: 私、「本当に気持ち悪い男の人だなぁって」、思いました
コバヤンさん: 彼は当時髪が長かったんですよ
ジャパさん: めっちゃ汚い格好で、間違いなく路上で生活をしているような雰囲気で
コバヤンさん: で、パチプロやったよな
ジャパさん: クズみたいな生活を送ってましたよ、、、そんな生活してたら何が辛いって、彼女ができない。クズの頂点という自負はありましたね
あっけさん: その時に出会って、『こっぺぱんバイオレンス』に入ってもらいました。それまではあまり上を目指してなかったというかめざし方が分かっていなかったのですが、20歳前後の頃にMOJOというライブハウスに出始めてバンドとしての何をすべきかを学び、本格的に上を目指そうと思いました。で、とりあえずバンド名を改名したかったんです、名前ださいし(笑)
コバヤンさん: 「こっぺぱんバイオレンスです」って、名前言うのが恥ずかしかったし(笑)
あっけさん: 音楽的にも、もっとポップなモノがやりたいと思っていて。ずっとギターロックでシンセも入ってなかったので。J-POP寄りのことしたい、名前も変えたい、ホームページも変えたい、全部全部変えたいってなったときに、Gt.の宇宙が「それなら自分もやりたい事がある」ということになってしまって、、、私の中では宇宙という存在は大きくて、宇宙が抜けてしまうのならこのバンドは解散しようという事になりました。
その後、3人で『カトキット』というバンドの構想について話して、完全に上を目指すバンドをやると話したタイミングで、田中は「俺はやめておく」という事になって一旦抜ける事になりました。わたしとコバヤン、そこにワンマン(2016年1月23日)でもサポートしてくれた川尻くんがGt.で入り、もう1人Ba.の女のコの4人で『カトキット』がはじまりました。ちなみに、川尻君は『こっぺぱんバイオレンス』のファンだったコです。それが3年前、2013年の話になりますね。
4月に初ライブを京都でやったのですが、その時の対バンが「メシアと人人」と「ナードマグネット」、「シンガロンパレード」でしたね。
---え! 今聞くとすごい組み合わせですね
コバヤンさん: 確かにメンツいいけど、めっちゃ身内やんな
あっけさん: そんな感じでスタートしました
コバヤンさん: 夏にミニアルバムをレコーディングして、9月にレコ初企画をやって
あっけさん: ほんで、Gt.が、、、
コバヤンさん: 《自主規制》、で、抜ける事になりました
あっけさん: 12月に抜けたんやな。ほんで、なんか知らんけどBa.のヤツは消えました。いやもう、ほんま、《完全に規制》
ジャパさん: 《全くもってして規制》
コバヤンさん: 《どう考えても規制》
---か、書けないよ!
あっけさん: まぁ、2人が急にやめる事になったんですけど、MOJOのコンピレーションアルバム【戦艦モージョ】に入れてもらう事も決まってて、ライブも決まりまくっててどうしようってなったときに、助け船、電話しよ電話しよって
コバヤンさん: すぐに弾けて、俺らと仲良くできるヤツはアイツ(ジャパさん)しかいいひんって
---その時、ジャパさんは何をされていたのですか?
ジャパさん: あんとき僕は何をしてたんですかね
コバヤンさん: バーで演奏しながら働いてて、多忙でしたよ
ジャパさん: とりあえず貯金しようと思って。そこで蓄えて今後バンド活動をするときに活きると思い、まあただのフリーターですけど。で、その仕事中に突然コバヤンから電話あるからなんかヤバい事でもあったんかって、いや、実際にヤバい事になってたんですけど(笑)
あっけさん: 最初はサポートでお願いして、一回スタジオ入ってみて、帰りの車の中で田中氏に電話して「やろっ、て」
ジャパさん: 口説かれました、2014年の1月の話しですね
---そういうことだったのですね。色々な情報を事前に調べて、ジャパニーズ田中さんが出入りしているところまでは分かっていたのですが、そういう流れだったのですね。その後はどのような活動をされてきましたか
コバヤンさん: 編成が変わったからとても大変だったよね。ループステーションを取り入れて、それまではシンプルなKey.いるギターバンドという感じでしたから。
あっけさん: 1月のMOJOのコンピレーションアルバムに入れてもらったことがきっかけで、今のレーベルの方に声をかけて頂きました
コバヤンさん: そこからが目まぐるしかったもんな
あっけさん: そっから、東京にも月1回くらい行くようになって。でも、2014年は結構くすぶってて、最初ループステーションを導入したときに、全部の曲でライブやりながら弾いたのをループさせるのをやっていて、ステージで創るのがカッコいいって思っていたんです。でも、これじゃあパフォーマンスができひんし、こんなライブがいいんか? って
コバヤンさん: いろんな方に言われるのが「あっけ、忙しいそう」って
ジャパさん: ライブ中は常にバタバタバタバタ-って、俺ら2人が止まって見えるくらい
あっけさん: そういう、自分たちのペースをつかむのに時間がかかった1年でしたね
ジャパさん: 準備期間的な、過渡期でしたね
---まさにバンド名の語源にもなっている“過渡期”だったのですね。それで、2015年に入るわけですが、この年の活動について教えてください
コバヤンさん: 6月からのツアーがすごくて
ジャパさん: 50回は越えています
コバヤンさん: 11月12月で4本くらいの時に、なんか今月少ないなって
ジャパさん: 週1でライブなのに少ないと感じるくらいでしたからね
---私がカトキットに注目し始めたのは1st mini album「雨ニモマケル手帳」が出る前の、MV「雨ニモマケル」が出たときからです。あのMVを見て思ったのは「あれ? Vo.ってこんな女のコだったっけな?」ということなのですが
あっけさん: いや、ホンマに、あの日は寒すぎて、顔面蒼白で口紅を塗りたくるという
コバヤンさん: ぼくら撮影の間に、一つしか無いドライヤーの温風に当たるという
ジャパさん: プルプルしながらね
コバヤンさん: あの日雨ですからね。山の丘の方で撮ってて、ころころ天気が変わって、雨だけどたまに晴れ間が出るという
あっけさん: しかも、最高気温16℃、めっちゃ寒かったわー。寿司くんが監督編集をしてくれたんですけど、空の色を青くするに必死やったって
---MVのなんともいえない破れかぶれ感は、その過酷な環境があっての事だったのですね。あのMVが本当に印象的で、あっけさんの凄まじいボーカル、ジャパさんのキャラの濃さ、そしてコバヤシさんの体がバラバラになりそうなドラミング。もう、絶対にライブで観ないといけないと思い、カトキットのライブに足を運ぶようになりました