[レビュー]人魚に会える日。-Girl of the Sea.-

6月23日は何の日かわかりますか? 私にはわかりませんでした。沖縄のこと、基地のこと、そしてそこで生きる人たちのこと、、、この映画は沖縄を取り巻く様々な問題を考えるキッカケとなるでしょう

 

この映画を見終わった瞬間、自分の中で思考がぐるぐると慌ただしく回り続けていた。簡単に言葉にはできない、簡単に言葉にしてはいけない、そんな思いが頭の中に満たされている。

いま、心がとても、ざわついている。

IMG_6681人魚に会える日。下北沢唯一の映画館「Tollywood」

2016年5月25日(土)、下北沢トリウッドで久しぶりに映画を観る。観た作品は『人魚に会える日。』、公式サイトからあらすじを引用する。

縄の高校生ユメは、生まれた頃から近所に立ち並ぶ米軍基地を、当たり前のように感じていた。基地の建設で県民の意見が賛成・反対に二分されていることを知っていても、ユメにとって大きな問題ではなかった。
同級生の結介が姿を消すまでは…。

美しい海が基地建設によって奪われることをひどく気に病み、突然姿を消してしまった結介。
結介を探すべく、ユメは基地建設の計画が進む村を訪れる。
その村では古くから、海や山など、自然界の神の許しを乞いながら生活していた。

基地はつくるべきなのか。
基地にまつわる争いが終わるときは来るのか。
村人の思い、姿を消した結介の思い、神の思い。
ユメは突然突きつけられた沢山 の思いを前に、
ひとつの答えを見つける。

『人魚に会える日。』公式サイト「あらすじ」より

沖縄の米軍基地問題を扱った作品、最初はその程度の認識だった。しかし、映画を見終わった後、唯一言葉にすべきだと思った感想はこれだ。

『自分は米軍基地を初めとして、沖縄のことは何もわかっていない、沖縄の人のことも何もわかっていない』

沖縄の人たちが抱えている問題は自分が考えているより遙かに大きく、いや、誰もが完璧な回答を出すことができないほど大きすぎて、そんな問題と隣り合わせで生きている。沖縄は想像以上に広く、たくさんの地域にたくさんの人たちが暮らしている。当然の話だが、若者からお年寄りまで年齢もバラバラだ。友達同士でも考えていることは違う、ご近所さんでも考えていることは違う。そこに正解なんて存在しない、誰も正解なんて持っていない。

作品の話しに戻ろう。この作品は基地問題を扱ったドキュメンタリーではなく、あくまでフィクション作品だ。ファンタジーやホラー的な要素があると考える人もいるけど、個人的にはファンタジー的な要素はありつつも、沖縄が抱える基地問題をベースとしたフィクション作品だと考えている。ただ、内容が内容だけにある意味問題作品と言ってもよいだろう。そう、正直映画を観ている最中はこの作品を紹介するのは難しいと考えていたからだ。

初日舞台挨拶

この日はトリウッドでの上映初日ということもあり、監督の仲村颯悟さんと助監督の仲宗根 啓介さんの舞台挨拶があった。何の事前情報も無く観たこともありまず驚いたのは二人の若さ、現役大学生の20歳。二人とも沖縄出身で、今は東京の大学に通っている。それ以前に、この映画は全スタッフが沖縄出身の大学生で、出演するキャストも沖縄の役者や芸人、タレント、そして沖縄出身のミュージシャンCoccoだ。

仲村さんがこの映画を作る切っ掛けとなったのは上京して迎えた6月23日。『6月23日』正直全くピンと来ない日付だった。しかし、沖縄の人にとっては絶対に忘れることができない「慰霊の日」だ。1945年6月23日に太平洋戦争沖縄戦が終結したことから、この日を「慰霊の日」とし平和祈念公園で沖縄全戦没者追悼式が行われる。確かにテレビや新聞、Webニュースでそのことは伝えられるし行われたことを認識はしている。しかし、『6月23日』という日にちだけ聞いても何の日なのか私はわからなかった。沖縄以外の多くの日本人にとってそれが普通の感覚なのかもしれない。それを目の当たりにした仲村さんは仲宗根さんに話を持ちかけ、この映画の制作がスタートした。

彼がどのような想いでこの映画を作ったのか、ハッキリとした想いはわからない。いや、沖縄出身の彼自身、明確な答えは持っていないのかもしれない。多くの沖縄の若者が同じように、単純に回答を出すことができる問題でないことを受け止めながら生きているのだろう。ただ、1つ言えることは、本当の沖縄のことを1人でも多くの人に考える切っ掛けを与えたい、その想いが込められた作品である事は間違いないだろう。事実、この作品を見終わった後、いくつも浮かんだ疑問を調べはじめている自分がいる。その先に結論が見いだせるのかわからないが、まずは知ることそこからはじめよう、あまりに自分は沖縄のことを知らなさすぎる。

改めて、映画を観ている最中はこの『人魚に会える日。』を紹介するのは難しいと考えていた。しかし、その考えはラストシーンで全て覆される。

『「人魚に会える日。」は1人でも多くの人に観てもらうべき映画である』

今、私は自信を持って当サイトで紹介したい。さあ、考えはじめよう、沖縄のことを。

『人魚に会える日。』

公式サイト: http://www.ningyoniaeruhi.com/
下北沢トリウッド
(代沢5-32-5)
6/25(土)~7/8(金): 土日 11:40/平日 14:00
7/9(土)~29(金): 17:30
※火曜定休
料金:一般・大学専門 1,500円 / 高校 1,000円
中学生以下 800円 / シニア 1,000円
リピーター割(前回鑑賞時の半券提示で):当日一般・学生料金より300円引き