劇団フルタ丸『寂しい時だけでいいから』フルタジュン・アフターインタビュー

2018年5月30日(水)から6月3日(日)まで浅草九劇で上演された、劇団フルタ丸『寂しい時だけでいいから』。

久々に下北沢を離れての本公演、日替わり出演者や主宰のフルタさんが温め続けていた住宅展示場を舞台とした作品ということもあり、アフターインタビューを実施しました。フルタジュン

---浅草九劇での本公演お疲れ様でした、公演を終えての感想をお聞かせください

フルタジュンさん(劇団フルタ丸主宰、以下、フルタ): 「フルタ丸はこういう作品を作る劇団である」という、劇団としての定義を年明け前から劇団内で話し合い、その上で作品を作りはじめました。それは初めての試みで、フルタ丸に求められているものやお客さんが楽しみにしてくれていることはなんだろう、そのあたりを全員で話し合い、劇団フルタ丸の定義を再整理した上で新作を作った経緯があります。まだ、最後の答え合わせを劇団員とできていませんが、自分の中でこういうものを作りたい、これが劇団フルタ丸だ、という部分が作品として結実し、観劇頂いた皆様にしっかりと届いている手応えがあります

---2日目に宮内さんにコメントを頂いたのですが、劇場入りしてゲネプロで一気にスイッチが入ったと話していました。その時はあまり深く考えていなかったのですが、上演終了後の宮内さんのブログを読んで、本当に今回のお芝居はゲネで完成したのだと改めて知りました。セットが完成した状態、それが見えて初めて固まったのかなと

フルタ: 宮内君の主人公としての気持ちの変化が、今回の作品のテーマとも直結しています。気持ちの変化を作るためのセットの中での人物の動き方や、お客さんからの見え方のすりあわせが必要でした。ゲネプロを録画したものを確認し、演技の間であったりリアクションの強弱といった最終的な微調整が全てできたのが、ゲネプロ後だったという感じですね

---まさに、水曜日の本番前に完成したという感じですね

フルタ: お客さんから言われたりツイッターでも感想を書いて頂いているのですが、いろいろな人の孤独を集めてあの作品を作ったよりは、自分の中にある具体的なイメージから人物の孤独を描き、それが多くの人に伝わればいいと考えていました。結果的に個人的な狭い意味での孤独を描きながらも、それぞれの孤独をお客さんがキャッチし、作品に登場するキャラクターに自分を重ね合わせたり、孤独と孤独が交わっている部分を探し出してくれました。私が演じたキャラクターと清水さんが演じたキャラクター、宮内くんを含めて三者三様で3人の孤独を通じ、様々な孤独に触れることができたと感じています

---そもそもの話しですが、夜に現れた家族とは何だったのでしょうか

フルタ: 私の中での意味としては、トキオが見たかった家族、実は背を向けていたけど自分の中で描いていた理想の家族像です。世の中を斜めに見ていて素直ではなくそれが憧れだとは一度も言ってないけど、心の中ではそういうものに対する憧れであったり、家族に対する希望があの幻に結実していた。そういう意味でマッチ売りの少女と同じですね

---お芝居は必ず一つの結末に至るわけですが、それを観た人たちの受け止め方は何通りかあると思います。ただ、今回のお芝居ほど受け止め方が1人1人で異なっている作品は初めてです。注目しているポイントも人それぞれで、まさに演劇だからできる伝え方という感じでした

劇団フルタ丸『寂しい時だけでいいから』劇中写真
劇団フルタ丸『寂しい時だけでいいから』劇中写真

---改めて、このお芝居で伝えたかったことについて教えてもらえますか

フルタ: お客さんの受け取り方が違うというのは、ツイッターなどで感じていまして、「ほっこりする」という方もいれば「怖くなった」という方もいる。それは真逆の感想で、最後が残酷である救いがないように思えたと感じた方がいる一方で、家族とはなにかを考えさせられたと言う人もいる。一つの作品から両極の感想が出てくるのは作り手としては嬉しくて、常々思っていますが入り口広く出口いっぱいというのがエンターテインメントとしては一番おいしいことだと思っています。

あと、去年までの自分の中での作劇の方法と比べ、これまで以上の結果が出るんじゃないかと書いている時から感じていて、そのくらい作品の枠組みであったり骨格が間違いないと確信していました。発想した時もそうでしたし、書きながらもそう思っていたので、平たく言うと自信がありました。これまで作品をつくってきた感覚から、今までにないものを創造することができたと、ワクワクしていましたね。そこに、温めに温めていた「住宅展示場」という場所を盛り込みましたからね

---書いている段階からそこまでイメージできていたのですね。それではキャストについて、宮内さん以外の皆さんは比較的自由に演じていたと思いますが、その中でも清水さんと真帆さんが二つのシーンでお互いの立場が入れ替わる形になっています

フルタ: 逆の立場をやらせることが一つのポイントだと思っていました。清水さんと一緒に演劇を作り始めて8年ほど経ちますが、私の中では今回清水さんが演じたお父さん役が、今までで一番のはまり役だったと手応えがありました。ちょっと小生意気で調子乗りなんだけど「実は」みたいなあの雰囲気は、メンバーの中でも清水さんしか出すことができない。水を得た魚のように稽古をしているのを見て、清水さんのはまり役を8年かけて見つけたと思いました

---他のお芝居でも、登場しそうなキャラですよね

フルタ: 出せますね、あの雰囲気、あの感じですね

---一つだけわからない部分があったのですが、篠原さんが寝っ転がるシーンがありますよね、あれは何が元ネタなのでしょうか?

フルタ: プロレスですね、有名な新日本プロレスのトップレスラーがいるのですが、猪木における「ダー!」と同じような感じですね。僕の中では相当認知されている思い込みがあったのですが、、、

---いや、住宅展示場マニアのキモチと同様で、わからない気がします

フルタ: 僕が知る限り、何人かのプロレスファンは反応してくれましたけどね

---ただ、ネタ自体はよくわからないけど、観る側はシーンとして理解できました、思い切ってるなぁと

フルタ: 篠原は苦しんでいましたね、もちろん知らないですし。YouTubeで何度も観て、何度も練習していました

---なんですかね?

フルタ: まさに「なんですかね?」と、篠原からも何度も言われました。でも、これはこういうものだからやってくれと

---逆に知らない方ができたのかもしれないですね

フルタジュン

---続いて日替わり出演者について、初日の松尾英太郎(劇団スパイスガーデン)さんが真帆さんと演じていましたが、アレは本当の不倫なのか、それとも台詞でもあったようにトキオの気持ち探っているのか、どちらで描かれていたのですか?

フルタ: あれは探っているという意味合いで、いつトキオが入ってきてもよいように2人がやりとりしているところ、行き過ぎてしまっているという設定ですね

---ああ、そっちの設定だったのですね。それにしてもクドいとはまた違う、松尾さんが現れた瞬間から怪しすぎで、とても素晴らしい演技でした。あの1回だけというのが、本当に贅沢ですよね

フルタ: 1回だけですね、2日目の里村さん、最終日の西川さんも1回だけですね

---最終日の空き巣との絡みを見たかったです

フルタ: ご覧頂いてないのでどんなシーンだったのか説明すると、その空き巣は駅前を家族でうろつくトキオを見ていて、今まで盗めないものは無いといろいろな家に入って来たけど、家族のぬくもりだけは盗めなくてトキオの家に忍び込みます。そこでトキオと遭遇するわけですが、空き巣とのやりとりで自分がうらやましいと思われる存在だと気付かされ、背中を後押しされるという展開ですね

---ああ、それは見たかったです。4日目のインコさんについてはなんとなく想像ができそうです、ホームステイしているという設定だけで、もう何か見えてきますね、これまたアクが強そうです。アクが強いと言えば3日目の大勝さんですかね、アクが強いというか何をしでかすのかわからない感じが、一番怖かったですね

フルタ: 5人供に言えたのは、それぞれがすごく背負って出演してくれたことですね。気軽な感じではなく、まだやれると延々と追求してくれる人たちばかりなので、日替わり出演者というよりはもはや《出演者》ですね

---私が見た前半3日間の中では2日目の里村さんが最も印象的でした。ふざけているのか、本気なのか、、、歳をとってくると、実際にそんな感じじゃないですか、それがすごくリアルで

フルタ: 里村さんは超ベテランで、様々な舞台をやってきていますからね

---出てきた瞬間の空気がスゴかったです、なんとも言えない不安さが。実際のおじーちゃんとかもちょっと心配な感じがありますから。それにしてもこの日替わりのシステムはスゴかったです。他の劇団のお芝居でも日替わり出演者は目にしますが、このようなそれぞれで演じるシーンが異なっているという形の日替わりはありますかね?

フルタ: たぶん、無いですね。通常日替わり出演者の台本は一緒でそれぞれに自由度が与えられている感じですが、今回はそれぞれのキャストにちゃんと台本を用意して、事前に稽古もして当日も合わせています。本当に皆さんスゴかったです

---これまでの日替わり出演者のイメージを覆されました

フルタ: 今回の日替わり出演者という仕組みは、一つ見つけたなと感じていて、次なのか、次の次なのかわからないですが、改めてやりたいと考えています

---続いてセットについて、浅草九劇が広いこともあり今までに作った中では一番大きなセットですよね

フルタ: 確かに大きいですね。いろいろな人が褒めてくれまして、あの理想的な家の真ん中の上に警備員の詰め所がすっぽり入っていることを評価してくれたのが嬉しかったです

---確かに、あそこだけ異空間ですね。動いているわけではないのですが、換気扇が付いているじゃないですか、あれだけでなんともいえない雰囲気を出しています。それにしてもあのセットを作るのは大変です、もはや家が建てられそうですよね

フルタ: 美術さんと舞台監督がいれば家を安く建てられる、ということはもっぱら演劇界で話されていますね

---安く建てられるって(笑)

フルタジュン

---さて、今年の本公演が終わり、来年は再び下北沢での開催となります。詳細はいつ頃発表でしょうか?

フルタ: 年明けに、発表する予定です

---ちなみに、住宅展示場がテーマでは、

フルタ: ないですね(笑)。ただ、まだまだ住宅展示場を舞台にしたものを作れることは感じてして、今回写真を撮影させて頂いたパナソニックホームズさんにまた遊びに行かせてくださいと話をしています。さらにのめり込みましたね、住宅展示場という場所に

---またいつか、住宅展示場をテーマにしたお芝居を見ることができることを心待ちにしています。ありがとうございました!

劇団フルタ丸 2018年 本公演『寂しい時だけでいいから』

浅草から再び下北沢へ、詳細は未定ながら来年の本公演は下北沢で行われると発表した劇団フルタ丸。今年の本公演が終わり、フルタ丸は確実にステップアップしたと感じました。

すでに来年の本公演が楽しみですが、その前にフルタさんが脚本と演出を担当する作品【2.5次元舞台×サウンドドラマ「下北沢VR」】が7月25日から29日まで下北沢シアター711にて上演されます。下北沢が舞台にし、そしてサウンドドラマ(ボイスドラマ)から実際のお芝居に繋がる作品、こちらも大いに期待できそうです。詳細は公式サイトをチェックしてください。

2.5次元舞台×サウンドドラマ 『下北沢VR』